研究課題/領域番号 |
20K15240
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分32020:機能物性化学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
出倉 駿 東京大学, 物性研究所, 特任助教 (80837948)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2021年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 水素 / 固体電解質 / 無水プロトン伝導体 / 分子性固体 / 分子ダイナミクス / 固体核磁気共鳴法 |
研究開始時の研究の概要 |
次世代の水素社会へ向けて水素から電気を取り出す燃料電池に注目が集まっており、100 °C以上でも利用可能で(無水)、柔軟かつ環境調和型(有機)、かつ液漏れしない(固体)、伝導度が10-2 S/cmを超える高効率な無水有機固体超プロトン (H+)伝導体が求められている。H+伝導には水素結合構造の構築及び分子回転によるH+の受け渡しの双方が重要であるにも関わらず、これまでは前者の静的な要素にしか注目されておらず、超プロトン伝導実現には至っていなかった。本研究では、静的な要素に加えて有機結晶中の動的な分子回転や秤動運動等を積極的に活用することで、次世代材料とも言える無水有機超プロトン伝導体の実現を目指す。
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研究成果の概要 |
本研究では、固体中分子運動と無水プロトン (H+)伝導度の関係を解明すべく、分子性イミダゾリウム (ImH+)塩単結晶を合成し、異方性を含めた無水H+伝導度と分子運動評価による伝導機構調査を行った。その結果、目標値である0.01 S/cmの伝導度は実現できなかったものの、ImH+の回転運動による伝導機構を複数の系で明らかにし、3次元的な回転運動を示す系では0.001 S/cm超の最高伝導度を実現した。一方で、ImH+を1,2,3-トリアゾリウムに置き換えた系では、H+互変異性による低障壁かつ0.001 S/cm超の高伝導性が見出され、分子運動に代わる新たな伝導機構への展開の可能性が示された。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
高効率な無水有機固体プロトン伝導体は、無加湿で動作可能な次世代型燃料電池の固体電解質への応用が期待されるが、本研究の成果は顕著な分子ダイナミクスがかつてない高プロトン伝導性をもたらすことを示しただけでなく、プロトン互変異性という新たな高伝導性物質の設計指針を提示しており、実用的な固体電解質の設計指針に大きく貢献する結果である。一方、無水有機結晶中のプロトン輸送現象は、量子波動性を伴うプロトンの水素結合中移動・分子運動・プロトン脱着に伴う電子系の組み替えが協奏した基礎研究的にも重要な課題であり、本研究の成果は環境科学・材料科学のみならず物性科学などの周辺分野への波及効果が大きいと考えられる。
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