研究課題
若手研究
歪みを持つ非平面π共役化合物は、これまでにない光特性や半導体特性などを示す可能性があるため次世代の有機分子材料として注目を集めている。一方で、その合成には多量の酸化剤、還元剤を用いる必要があることから、より効率的かつ環境に配慮した反応開発が重要である。そこで本研究では、金属もしくは合金ナノ粒子触媒を用いた非平面π共役化合物の触媒的合成法の開発を実施する。これまで用いていた酸化剤、還元剤に替えて毒性のないエチレンを水素アクセプターに用いる反応開発を推進することで本研究目的を実現する。
高歪みエネルギーをもつπ共役化合物を、温和な条件下、触媒的に合成する合金ナノ粒子触媒の開発を行った。金とパラジウムからなる合金ナノ粒子をサイズ選択的に調製する手法を開発し、電子顕微鏡による観察およびX線を用いる分光分析によるキャラクタリゼーションを行った。またそれを用いることで、ジヒドロアントラセンの脱水素型芳香族化反応がエチレン雰囲気下進行し、高収率でアントラセンが生成することを見出した。また溶液系のX線吸収スペクトル計測の高度化を実施した。その結果、塩基を用いない鈴木・宮浦クロスカップリング反応の重要な中間体の溶液中での描像を明らかにすることに成功した。
本研究の遂行により、一般に合成が難しいとされている高い歪みエネルギーをもつ有用な共役系化合物の触媒的な合成が可能になり、今後これまで合成することが困難な化合物を穏和な反応条件で合成できるようになると期待される。また、本研究を通じて高度化を行った放射光X線を用いた分光分析技術は、これまで検出が困難であった溶液中での分子の構造解析を可能にした。そのため、これまでブラックボックスになっていた均一系触媒反応の反応機構の描像をより正確に記述することができるようになったため学術的に極めて重要な成果である。
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