研究課題/領域番号 |
20K15302
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
亀渕 萌 日本大学, 文理学部, 助手 (60758564)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2021年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2020年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
|
キーワード | 透明発光体 / プロトン伝導フィルム / Nafion / 希土類錯体 / フルカラー発光 / プロトン応答 |
研究開始時の研究の概要 |
透明発光体は自身の光散乱による損失が少なく、次世代の省エネ材料として期待されている。本研究では、まずpH応答性のβ-ジケトン配位子に青色発光を示すキニーネを導入した配位子でTb(III)、Eu(III)錯体を合成し、フルカラー発光素子とする。これをNafionというプロトン伝導膜へ導入し、外部pH制御、または電圧をかけて生じるプロトン伝導を利用して透明フィルムのフルカラー発光制御への展開を目指す。
|
研究実績の概要 |
研究代表者は、単一の固体透明媒体において複数の発光波長を外部刺激で制御できるような材料系を開発することを目指し、陽イオン交換膜・プロトン伝導膜として知られるナフィオン(Nafion)とpH依存発光性分子を組み合わせる手法を提案してきた。最近では、pH応答性希土類錯体[Ln2(PBA)6] (Ln = Eu, Tb) を基盤物質として、透明発光フィルム[Eu2(PBA)6]/[Tb2(PBA)6]@Nafionに対してpH(緩衝液)および印加電圧によって発光色を赤~緑に制御することに成功してきた。本研究では、フルカラー発光の制御を目指すにあたって、青色発光の要素としてキニーネを導入することがメインとなる。 本年度はキニーネ、Eu, Tb錯体をNafionへ導入した透明フィルムの作成を行い、発光スペクトルのpH依存性について検討を行った。作成直後のフィルムをpH 2-11の範囲で緩衝液に作用させると、酸性領域で非常に強く青色発光するフィルムが得られた。例えばpH 2では、400-450 nm周辺に現れる青色発光ピークの強度は、Tb由来の544 nm (5D4 -> 7F5)やEu由来の614 nm (5D0 -> 7F2)の発光強度より10倍以上高いものであった。その後pHを上昇させると青色発光強度はすみやかに10分の1以下に減少し、希土類の発光強度が相対的に強く観測された。ただし、キニーネは発光量子収率が高く、フィルム内において青色発光の成分が相対的に強くなりやすいため、白色発光を目指すためにはフィルムへの導入量を調節する必要がある。また、フィルムへ電圧印加する際の電極依存性について調査を行い、AlやCuに比べてPt, Pd, Auといった金属を用いると良く色変化が発生する傾向が見えてきた。このメカニズムや理由について考察を進めているところである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
青色発光の要素を取り入れて、光の3原色を備えた透明発光フィルムを実現し、発光スペクトルのpH依存性を調べることができた。これまでの研究ではTb錯体はpH 6程度まで544 nm (5D4 -> 7F5)の強度が強く、Eu錯体はpH 7以上で614 nm (5D0 -> 7F2)の発光強度が強いことが分かっており、今回pH 5以下で青色発光が特に強く観測されたことから幅広いpH領域で可視領域の発光を制御できる道筋がついてきた。また、電圧印加による発光色制御について、湿度・電極材料・プロトン包接量など条件の最適化が進んできている。
|
今後の研究の推進方策 |
キニーネ、Eu, Tb錯体のNafionへの導入比率とpHを変化させて、青・緑・赤色発光強度のバランスを整えるように調査を進めていく。導入量の最適化に目途がつき次第、錯体フィルムのプロトン伝導の相対湿度依存性を調査する予定である。また、フィルムに対して電圧印加によるプロトン伝導を利用したフルカラー発光の制御まで検討を進めたい。
|