研究課題/領域番号 |
20K15427
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
高部 響介 筑波大学, 生命環境系, 助教 (60821907)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | バイオフィルム / ライブイメージング / 自家蛍光 / 画像解析 / 機械学習 / 1細胞解析 / 不均一性 |
研究開始時の研究の概要 |
地球上の微生物のほとんどは集団(バイオフィルム)を形成して生活を営んでおり、我々人類は、様々な場面でバイオフィルムと関わっている。バイオフィルム内では、同一遺伝子型細胞でさえ、遺伝子発現等に不均一性が生じ、集団内で役割分担をしていると考えられている。しかしながら、この機能的な分化には、集団構築プロセスにおいて「いつ、どこで、どのように」生じているのか、また機能分化には普遍的な法則があるのか等、不明点が多い。本研究ではこれらの疑問に答えるために、細胞から発せられる自家蛍光、画像解析技術及び機械学習的手法を組み合わせ、微生物の集団構築の様子をモニタリングする技術の構築を目指す。
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研究実績の概要 |
地球上の微生物の多くは集団(バイオフィルム)を形成し生活を営んでおり、微生物バイオフィルムは正負の両面において我々の生活に深く関わっているため、その集団の生態を深く理解することが重要である。バイオフィルム内では同一遺伝子型でさえ細胞ごとに遺伝子発現等に不均一性が生じることが知られており、集団内で役割分担(機能分化)が行われていると考えられている。しかし、役割分担が生じるプロセスはよくわかっていない。そこで本研究では細胞が生来的に持ち合わせている自家蛍光に注目し、バイオフィルム研究におけるモデル細菌である緑膿菌のバイオフィルム構築プロセスの総合的な理解を目指している。自家蛍光ライブイメージング技術及び画像解析手法、機械学習的手法を組み合わせ、1細胞毎の時空間分布・機能性を経時的に追跡可能な新奇モニタリングシステムの構築を行う。並行して、同種細胞においても性質・機能の異なる細胞の自家蛍光には違いが生じるのかについても様々な細胞で広く検証していく。 これまでの研究成果により、集団構築プロセス内で生じる役割分担、特に細胞集団の骨格形成に重要な細胞外多糖(EPS)産生機能を持つ細胞の自家蛍光が他の細胞と異なることが示唆された。そこで、当該年度では野生株とその機能を失った変異株の自家蛍光を比較した結果、異なる自家蛍光を発することがわかり、ディープラーニングを用いて分類モデルを構築したところ約80%の精度で区別できることがわかった。さらに、マイクロ流体デバイスと自家蛍光のタイムラプスイメージング、機能性マーカーを組み合わせ、バイオフィルム形成プロセスにおいていつ機能分化が生じるのかを調べた。その結果、初期段階ですでにEPS産生機能を持つ細胞が出現しかつ自家蛍光においても特徴的であることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和四年度は昨年度に示唆された結果を裏付けるために、EPS産生能を持つ野生株と機能を失った欠損株の自家蛍光を比較した。その結果、自家蛍光の強度がピークになる波長に差異が見られた。さらに、ディープラーニングを採用することによって自家蛍光を基に区別可能であることがわかった(正答率約80%)。マイクロ流体デバイスによる安定的な培養システムと自家蛍光ライブイメージングを組み合わせ集団構築プロセスの初期段階から成熟したバイオフィルムにおける個々の細胞の自家蛍光変化を観察した。その結果、初期段階ですでに細胞外多糖産生機能を持つ細胞が出現しかつ自家蛍光においても他の細胞と比べ特徴的であることがわかった。さらに、様々な細胞機能に重要であることが知られている、個々の細胞の膜電位においても集団内で多様性が生じていることがわかった。 予定していた自家蛍光的特徴によって機能分化した細胞を検出するモデルの構築ができたことから、おおむね順調に進展しているとした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果から、細胞の自家蛍光的特徴はその機能を反映することがわかってきた。今後も当該年度に引き続き他の機能性細胞と自家蛍光の対応付けを継続して行い、機能性細胞分類モデルの構築を目指す。さらに、画像解析手法を発展させ、他の微生物種(病原性細菌スピロヘータ)のバイオフィルム構築プロセスの1細胞レベルでの解析を行い、どのように3次元構造体が出来上がるのかを詳細に明らかにすることを目指し、微生物種を越えて集団構築プロセスに共通するダイナミクスが存在するのかについても探求していく。
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