研究課題
若手研究
放線菌二次代謝物は、様々な疾患の治療薬や農薬、研究試薬開発等へと応用され、人類の福祉の発展に多大な貢献を果たしてきた。一方近年では、放線菌二次代謝物の中には、生態的意義を有する化学コミュニケーション分子が存在し、新たな生命現象の解明や産業応用が進みつつある。本研究では、化合物の報告がなされていない希少放線菌を、ゲノム情報を活用し網羅的に解析することにより二次代謝能の解明を目指す。さらに、取得した化合物から、植物生長の制御に関与する物質を探索し(植物生長促進・阻害物質、植物病原菌への抗菌物質等)、放線菌-植物間の共生関係の理解を通じて、農業用微生物資材へ応用することを目的とする。
希少放線菌および耐熱性放線菌が生産する二次代謝物を解析した結果、合計17種の新規化合物を単離・構造決定した(ポリケタイド、トリペプチド、不飽和脂肪酸、トリプトファン誘導体、アゾキシ含有化合物、等)。さらに、植物生理活性を評価した結果、植物病原菌への抗菌活性やイネ種子の生長促進もしくは生長阻害を示す、希少放線菌由来二次代謝物をいくつか同定するに至った。また、各種薬理活性を評価したところ、細胞毒性や抗菌活性のみならず、抗トリパノソーマ活性(シャーガス病原因原虫)、抗ウイルス活性(インフルエンザおよび新型コロナウイルス)、がん幹細胞選択的な抑制活性等の有望な生理機能を有することを見出した。
近年、天然物からの新規化合物の発見は困難となってきているが、希少放線菌や耐熱性放線菌のような未研究微生物種の二次代謝物を精査することで、新規化合物の発見に結びつく可能性を示した。また、希少放線菌由来の二次代謝物の中には、種々の植物生理活性を示すものが存在していたため、今後詳細な解析を進めることで、放線菌-植物間の共生関係の理解だけでなく、農業用微生物資材への応用も期待される。耐熱性放線菌から発見した二次代謝物は、常温培養と比較して、高温培養特異的な生産もしくは増強する物質であった。今後はその生産制御や生理機能を解析することで、放線菌二次代謝物の生態的意義が明らかになることも期待される。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 1件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)
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