研究課題/領域番号 |
20K15532
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分39040:植物保護科学関連
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研究機関 | 東洋大学 (2023) 明治大学 (2020-2022) |
研究代表者 |
宮田 佳奈 東洋大学, 生命科学部, 助教 (10637143)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | パラセポニア / 植物―微生物間相互作用 / キチン誘導性防御応答 / LysM受容体型キナーゼ / 根粒菌共生 / 樹木 / Parasponia / 植物-微生物間相互作用 / Paraspoia / LysM型受容体キナーゼ |
研究開始時の研究の概要 |
非マメ科で根粒菌共生をする木本植物、ParasponiaがもつLysM型受容体キナーゼPanLYK3は、根粒菌共生とキチン誘導性の防御応答という対照的な2つの応答において重要な機能を持つ。Parasponiaの根粒菌共生には、PanLYK3に加えてPanNFP2が必須だが、PanLYK3と共にキチン誘導性の防御応答に関わる受容体は未だ明らかになっていない。そこで本研究では、PanLYK3と複合体を形成し、キチン誘導性の防御応答の起動に関わる受容体を同定し、機能解析を通して防御応答と共生応答が選択的に起動されるメカニズムの解明を目指す。
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研究実績の概要 |
パラセポニアは非マメ科であり根粒菌と共生する木本植物である。パラセポニアのLysM型受容体キナーゼ、PanLYK3は、根粒菌共生とキチン誘導性防御応答という対照的な2つの応答において重要な機能を持つ。パラセポニアの根粒菌共生は、PanLYK3とPanNFP2という受容体が複合体を形成することで誘導されると考えられている。しかし、PanLYK3と共に防御応答に関わっている受容体は未だ明らかになっていない。本研究では、キチン誘導性防御応答に関わる受容体として、LysMモチーフを持つ3つのタンパク質を候補として挙げている。それらの候補遺伝子の欠損変異体を作成し、防御・共生における応答の評価を行うことにより、PanLYK3と複合体を形成してキチン誘導性の防御応答の起動に関わる受容体を同定し、機能解析を通 して防御応答と共生応答が選択的に起動されるメカニズムの解明を目指している。 昨年に引き続きパラセポニアの欠損変異体の作出を行った。昨年度までの研究から、形質転換に用いているベクターに大幅な欠損が認められた為、新たにベクターを作成し直し、形質転換を行った。その結果、候補受容体の欠損変異体を複数ライン獲得することに成功した。現在は得られた変異体のシュートを、実験に用いるために十分な量が得られるまで増やしている段階である。次年度は、この候補受容体の変異体を用いて、防御応答の指標である活性酸素応答と下流因子のリン酸化解析、および根粒菌共生や菌根菌共生への影響評価を行い、論文を投稿する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、本実験に用いるパラセポニアの生育や防御応答及び共生応答に関する実験条件の確立などが終了しており、本プロジェクトはゲノム編集技術を用いてPanLYK10変異体の作出を行い、その表現型解析を行うのみとなっていた。しかし、昨年度の時点ではかなりの数の形質転換を行ったにもかかわらず、期待していた変異体を得ることはできていなかった。その原因について調べたところ、オランダから移譲されたベクターが向かい合う同一なターミネーター配列を持つためにヘアピン構造を作り、大幅な欠損が起きていることが明らかになった。この点を踏まえて、昨年度新たにターミネーター配列を変えたベクターを作り直し、形質転換を行った。その結果、PanLYK10の開始直後に大幅な欠損を持つ変異体を、今回新たに複数ライン得ることが出来た。現在は獲得されたPanLYK10変異体を組織培養で増やしており、これを用いて、共生応答及び防御応答の評価を行い、その結果を論文としてまとめる予定である。 本年度はさらに、パラセポニアの根粒菌共生の評価方法に関して改良を行った。ワーゲニンゲン大学のグループでは培養液を含ませたパーライトを、直径20cm程度の円形のポットに入れたものにパラセポニアを植え、大規模な温室で栽培を行っていたが、同様の形で実験を行うと大学内の栽培施設のスペースを圧迫してしまうことから、省スペースの実験系が必要であると考えていた。本研究ではパーライトの代わりにバーミキュライトを用い、7cm×7cm×25cmのプラントボックス内で生育することで、十分な根粒形成が起こることを明らかにした。今後は、この手法を用いてパラセポニアの根粒菌共生の評価を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、作出に成功したPanLYK10の変異体を組織培養で増やしており、それを用いて本年度中にキチン誘導性の防御応答の評価、および共生応答の評価行う予定である。さらにこれらの結果について、早急にまとめ論文投稿を行う。 また、本研究で用いているパラセポニアを用いて、現在東北大学の共生ゲノミクスグループと共同研究を進めている。今後は、本研究のみならず、パラセポニアおよびその近縁種であるトリマを試料として用いることで、様々な分野の研究と共同研究を展開していきたいと考えている。
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