研究課題/領域番号 |
20K15659
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分42020:獣医学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 貴恵 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (50806362)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | センチネルリンパ節 / 磁気プローブ / 磁性流体 / 超音波エラストグラフィ / リンパ節マッピング / 磁気検出プローブ / エラストグラフィ / 頭頚部がん |
研究開始時の研究の概要 |
腫瘍の診断においてセンチネルリンパ節の転移評価は病期判定および治療方針の決定に重要であるが、特に頭頚部がんではリンパ支配が複雑であり正確で安全な同定法の確立が課題となっている。本研究では、磁性流体と磁気プローブを用いた「磁気センチネルリンパ節同定法」と、同定されたリンパ節における転移の有無を超音波エラストグラフィによって質的に診断する「エラストグラフィ転移診断法」による、「非観血的センチネルリンパ節転移診断法」を確立を目指す。
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研究実績の概要 |
センチネルリンパ節(SLN)の同定と評価は腫瘍の病期判定に重要であるが、解剖学的な領域リンパ節とは必ずしも一致せず、特にリンパ経路が複雑な頭頸部腫瘍などでは正確なSLN同定法の確立が課題である。本研究では、低侵襲かつ従来の同定法が抱える問題点を克服する磁性流体と磁気プローブを用いたSLN同定法と、同定されたリンパ節に対する超音波エラストグラフィによる質的診断を組み合わせた「非観血的センチネルリンパ節転移診断法」の確立を目指す。 2020年度には、磁性流体を用いた新規SLN同定法の確立の基礎的検討として健常犬を用いた磁気プローブ法の有用性評価と頭頚部のリンパ節マッピングを行った。2021年度には、超音波エラストグラフィの基礎データの集積を行った。より客観的で再現性の高い質的評価を行う方法としてShear wave elastographyを採用し、健常犬の正常リンパ節の硬度計測を実施した。2022-2023年度には犬の頭頚部腫瘍症例において、Ferahemeを利用した磁気プローブ法およびリンパ節マッピング、超音波エラストグラフィの組み合わせによるSLN同定法の検討を行った。2024年度には、症例の集積を継続するとともに客観的かつ定量的な新規指標としてCT texture解析を実施する。CT texture解析は画像上の病変の性質を数値化することで定量的に評価する手法であり、人医療領域において腫瘍病変の悪性度評価やリンパ節転移の検出における有用性が示されている。超音波エラストグラフィで得られた硬度計測値およびCT texture解析で得られたパラメーターと病理組織学的結果の比較を行い、これらの指標のリンパ節転移の臨床診断における有用性の検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
磁気プローブを用いた新規SLN同定法の確立に向けて、これまでに健常犬において磁性流体ResovistおよびFerahemeを用いたトレーサーとしての比較検討およびFeraheme-MRIによるリンパ節マッピングとCT Lymphographyの比較を行い、頭頚部のリンパ経路の検出におけるFeraheme-MRIの有用性を示した。これらの結果は第164回日本獣医学会学術集会で報告した。また、超音波エラストグラフィに関しては、Shear wave elastographyに着目して健常ビーグル犬を用いて頭頚部リンパ節の硬度計測を実施し、犬の正常リンパに関する硬度計測の過去の報告に一致した傾向を示すデータが得られた。 これらの基礎データに基づき、犬の頭頸部腫瘍症例における磁気プローブ法およびリンパ節マッピング、超音波エラストグラフィの組み合わせによるSLN同定法を策定、その有用性の検討を開始したが、新型コロナウィルス感染症対策に関連した診療制限の影響により、2022-2023年度の期間中に有用性の検討に十分な症例を集積することが困難であった。組み入れ基準に合致、かつインフォームドコンセントの飼い主の同意が得られる症例数は限られるため、一症例から得られる情報の量と精度を上げることが課題となった。特にリンパ節の質的診断において、超音波エラストグラフィによる硬度計測値に加え、より客観的な定量評価の指標が必要と考えられた。今年度は引き続き症例の集積を行うとともに、診断精度の高いSLN同定法の確立に向けて標的リンパ節のCT texture解析を実施し、評価パラメーターおよびプロトコールの最適化を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、犬の腫瘍症例における磁気プローブ検出SLN同定法、Feraheme-MRIによるリンパ節マッピング、超音波エラストグラフィの臨床的有用性の検討を行う。頭頚部腫瘍症例のうち外科的切除とリンパ節摘出/郭清を行う症例を対象とし、術前のMRI/CT検査によるリンパ節マッピングを行い、いずれかの方法で同定されたリンパ節を含む体表リンパ節における超音波エラストグラフィによる評価を行う。術中では磁気プローブを用いたSLNの検出を実施し、リンパ節マッピングの結果と照合してリンパ節摘出の過不足を評価し、必要があればさらなる摘出を行う。摘出されたリンパ節は病理診断によって転移の有無と含有磁性流体量を評価する。これらの結果において犬の頭頚部腫瘍において磁気プローブ法とエラストグラフィの組み合わせで非観血的に術前に転移のあるSLNの同定が可能かを検証する。さらに、術前のCT検査画像を用いて標的リンパ節のCT texture解析を行い、転移診断において有用なパラメーターの検討を行う。
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