研究課題/領域番号 |
20K15698
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分42040:実験動物学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
宮坂 勇輝 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (30778098)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | NCマウス / 脳マラリア / ネズミマラリア原虫 / 遺伝子 / TXNIP |
研究開始時の研究の概要 |
マラリアの主な死因は脳マラリアと呼ばれる合併症である。ネズミマラリア原虫(P. berghei ANKA株)に感染したマウスB6系統は脳マラリアのモデルとして汎用されており、B6系統を用いて得られた知見は脳マラリアの発症因子として認識されている。研究代表者らは、新たにマウスNC系統が脳マラリアを発症する事に加え、この系統がB6系統の解析により脳マラリアの発症因子とされていた幾つかの遺伝的特性を持っていない事を発見した。そこで本研究はNCとB6系統の脳マラリア発症に関与する遺伝子群を同定し比較する事で、脳マラリア発症に必須の遺伝子群を明らかにし、より的確な脳マラリアの治療法や予防法の開発に繋がる知見を得る事を目的とする。
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研究実績の概要 |
ネズミマラリア原虫(P. berghei ANKA株)に感染したマウスB6とCBA系統は脳マラリアモデルとして汎用されている。研究代表者らは新たにマウスNC系統が脳マラリアを発症することに加え、既知の複数の脳マラリア発症因子を持っていないことを見出した。本研究ではこのNC系統を加えた脳マラリア感受性を示す3系統の発症に共通して関与する宿主遺伝子を特定することを目的とした。これまでに、これら3系統の脳マラリア発症時の脳のマイクロアレイ解析より、共通して2倍以上発現上昇する55種の遺伝子を見出した。前年度はそれら遺伝子のうち脳マラリアの発症に伴って発現が10倍近く増加し、発症との関係性が明らかとなっていない抗酸化機能抑制因子TXNIPに注目し、B6とNC系統で欠損マウスを作製した。本年度は両欠損マウスの脳マラリアの感受性解析を実施した。P. berghei ANKA株感染6日後の血虫率は、B6系統(7.81±2.12%)とB6-TXNIP欠損マウス(6.49±1.91%)間、NC系統(9.84±1.72%)とNC-TXNIP欠損マウス(9.94±2.75%)間で有意差はなく、TXNIPの欠損がマラリア原虫の増殖効率に影響しないと考えられた。そのうえで、B6系統(7.50±0.53日)とB6-TXNIP欠損マウス(7.88±0.35日)間、NC系統(8.13±0.35日)とNC-TXNIP欠損マウス(7.83±0.39日)間の平均生存日数に差は認められなかった。さらに、両欠損マウスとも野生型マウスとほぼ同時期(感染7~9日後)に脳マラリア特有の神経症状を呈して死亡した。したがって、TXNIPは脳マラリアの発症に直接的に関与していないと考えられ、脳マラリア発症時に認められた遺伝子発現量の増加は脳マラリア発症後の2次的現象である可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定通り3系統の脳マラリア発症時の脳のマイクロアレイ解析を実施し、共通して発現上昇する55種の遺伝子を見出した。さらに、脳マラリアの発症候補因子として注目したTXNIPの欠損マウスをB6とNCの両系統で樹立し、その脳マラリア感受性を調査することができた。しかし、予想に反してTXNIPは脳マラリアの発症に直接関与していないことが明らかとなったため、別の遺伝子について再検討する必要が生じた。したがって、研究は当初の想定より少し遅れている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
3系統の脳マラリア発症時の脳で共通して発現上昇する55種の遺伝子のうち、既に脳マラリアの発症との関係性がノックアウトマウスの解析により検証されている遺伝子(Igtp, Cxcl10, Gzmb, Ilgp1, Tap1, Nkg7, Trim21, Tlr7, Homx1)と本研究で解析したTxnipを除いた45種の遺伝子から脳マラリアの発症に共通して関与する宿主遺伝子を再度探索する。具体的には新たに脳マラリア抵抗性系統(BALB/c)のP. berghei ANKA株時の脳由来のRNAを抽出し、脳マラリア感受性を示す3系統との遺伝子発現量をqRT-PCR法により比較することで候補遺伝子の更なる絞り込みを行う。有力な候補遺伝子についてはゲノム編集技術により欠損マウスの作製を検討する。
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