研究課題
若手研究
グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーは糖脂質によるタンパク質の翻訳後修飾であり、初期発生や神経形成などの現象に重要な役割を果たす。GPIは生物種に共通のコア構造と、生物種ごとに異なる糖鎖で構成される側鎖から成る。近年、GPI側鎖とプリオン病との関連が示唆されているがその詳細は不明であり、GPI側鎖の生理機能も不明である。本研究では、GPI側鎖合成の最初のステップを担う糖転移酵素であるPGAP4をノックアウトしたマウスを解析することで、GPI側鎖の生理機能および疾患、特にプリオン病との関わりについて明らかにする。
グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーは真核生物に広く保存された、糖脂質によるタンパク質の翻訳後修飾である。哺乳動物細胞では約150種類ものタンパク質がGPIによる修飾を受け、それらGPIアンカー型タンパク質は様々な生理機能を発揮する。GPIは種間で共通のコア構造と、種間で異なる糖鎖からなる側鎖構造を有し、哺乳動物のGPI側鎖は、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)-ガラクトース(Gal)-シアル酸(Sia)の三糖から構成される。しかし、その生理機能は不明である。本研究では、申請者が初めて同定した、GPIにGalNAcを転移する酵素であるPGAP4をノックアウト(KO)したマウスを用いて、哺乳動物におけるGPI側鎖の生理機能を解明することを目的とした。最終年度は、PGAP4-KOマウスの生理機能の解析に加え、疾患との関わりについて解析した。まず生理機能については、PGAP4-KOマウスで記憶力の低下など脳機能の低下が認められることから、神経細胞やグリア細胞に変化が見られるかを調べた。その結果、神経細胞マーカー、グリア細胞(アストロサイト、オリゴデンドロサイト、ミクログリア)マーカータンパク質の発現は、PGAP4-KOマウスと野生型マウスの間で大きな変化は見られなかった。次に、疾患との関わりについては、プリオン病の発病までの期間について検討した。PGAP4-KOマウスの病原性Prion株に対する感受性を評価したところ、KOマウスは野生型マウスと比べて早期に構造異常化Prionの蓄積が見られ、早期に死亡することが明らかとなった。このことから、GPI側鎖は生理的に必要であるだけでなく、プリオン病発症の抑制にも重要であることが明らかとなった。この成果に関する論文が現在、Journal of Biological Chemistry誌にて印刷中である。
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J. Biol. Chem.
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