研究課題/領域番号 |
20K15752
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分43030:機能生物化学関連
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研究機関 | 鈴鹿工業高等専門学校 |
研究代表者 |
今田 一姫 鈴鹿工業高等専門学校, 生物応用化学科, 講師 (70793587)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | Dbf4-dependent kinase / 分裂酵母 / 胞子形成 / SPB / NDR kinase / シグナル伝達 |
研究開始時の研究の概要 |
一般的に、娘細胞の細胞膜は母細胞から直接受け継がれるが、酵母の配偶子形成にあたる胞子が形成される際には、胞子の細胞膜が母細胞の“中”で新しく形成される。この胞子細胞膜の新生にあたって、細胞内の膜の移動のしかたが大きく変わるが、これは動物細胞の一次繊毛膜形成と類似していることが知られている。これまでの我々の研究から、分裂酵母では、細胞増殖を調節するいくつかのシグナル経路因子が、胞子細胞膜新生時には関わり方を変化させ、膜の移動のしかたを調節する可能性が示唆されている。本研究では、これらのシグナル因子がどのようにして膜の移動を変化させ、細胞内での胞子細胞膜新生を導くのか、そのメカニズムに迫る。
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研究実績の概要 |
分裂酵母の胞子形成は、母細胞の“中”で新たな細胞が形成される興味深い現象である。この胞子の細胞膜は、中心体にあたる構造物・スピンドル極体(SPB)の細胞質側から、第二減数分裂の開始とともに形成され始める。本研究は、この胞子の細胞膜新生を開始させるSPB上のシグナル伝達経路を解明することを目的とする。 申請者らはこれまでに、Dbf4-dependent kinase (DDK)ホモログSpo4-Spo6が、何らかの基質のリン酸化によって胞子の細胞膜新生を開始させることを見出している。また、細胞質分裂から極性成長に切替えるMorphogenesis Orb6 network (MOR)と、核の分裂後に細胞質分裂を開始させるSeptation initiation network (SIN)が、胞子形成時にSpo4-Spo6と遺伝的相互作用を示すことを明らかにしている。栄養増殖時は、SIN→MORの調節で細胞質分裂と極性成長が調節されているが、胞子形成時には、Spo4-Spo6の関与によるMOR→SINという逆向き調節の存在が示唆されている。 Spo6を増殖時に発現させるとSPB局在が見られなかった。一方、第一減数分裂時以降はSPBの細胞質側に局在した。Spo6のSPB局在に必要なN末端側は胞子形成に必要であった。SINの足場タンパク質はSPBの細胞質側を構成する。そこでSINの足場をAIDシステムにより分解し、その時のSpo6の局在観察を試みている。胞子形成時の細胞でSpo6とSIN因子の物理的相互作用の検出を引き続き試みているが、現時点では相互作用は確認されていない。また、Spo4のリン酸化能が、胞子形成に関わる複数のSPB局在因子の局在に影響を与えることを見出した。これは、Spo4-Spo6によるSINと胞子細胞膜形成の調節メカニズム解明の手掛かりとなる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
第二減数分裂時のSPBに局在する因子のSPB上での局在位置にSpo4-Spo6が必要であることを見出すなど、本研究課題の計画外の実験によってSpo4-Spo6のSPBへの作用の手がかりを得ることができた。これを手掛かりに今後の研究を進めたい。しかしながら、従来の研究計画通りの実験では、Spo6とSIN因子の物理的相互作用の検出やリン酸化ターゲットの特定には至っておらず、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、現在行っている実験を完了させる。Spo6のSPB上での足場からターゲット候補を絞るため、SINの足場をAIDシステムにより分解した時のSpo6の局在観察を試みる。引き続き行っている胞子形成時の細胞でのSpo6とSIN因子の物理的相互作用の検出を行う。 また当該年度には、Spo4のリン酸化能が、胞子形成に関わる複数のSPB局在因子の局在に影響を与えることを見出した。その中には、Spo4のkinase-dead変異株でもSPBに局在するものの、他のSPB構成因子との位置関係を調べるとSPB上での細かい位置が変化しているものがあった。この因子は、野生型株ではSPBの細胞質側に局在し、spo4-KD変異株ではSPBの核側に局在した。同様の局在制御が、分裂時にSPBにリクルートされるSINの活性化因子でみられれば、Spo4によるSINの調節機構解明の手掛かりとなる。候補として、前年度に観察したPolo kinaseを考えている。Polo kinaseは、Spo4のkinase-dead変異株でもSPBに局在していたが、胞子細胞膜形成の中盤以降にあたる第二減数分裂後期での挙動が、その因子に類似していた。そのため、野生型とspo4-KD変異株で、Polo kinaseのSPB局在を他のSPB構成因子と比較し、SPB上での位置を観察する。
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