研究課題/領域番号 |
20K15832
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分44040:形態および構造関連
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研究機関 | 秋田県立大学 (2021-2023) 奈良先端科学技術大学院大学 (2020) |
研究代表者 |
津川 暁 秋田県立大学, システム科学技術学部, 助教 (20607600)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 植物成長 / 重力屈性 / 弾性体力学 / 画像解析 / 数理モデル / 連続体力学 |
研究開始時の研究の概要 |
植物は重力に抗して茎を上に向ける重力屈性という独自の生存戦略を持つが,その屈曲過程の力学的仕組みはほとんど明らかになっていない.本研究の目的は形態空間解析と呼ぶ形態を特徴づける新しい手法によって実験データと数理モデルを対応付けて,植物の力学的仕組みを理解する方法論を確立することである.本研究では数理モデルでのみ予測可能な物理的パラメータ(屈曲強度,弾性-重力相対長)を抽出することができ,植物体が「いつどこにどのくらいの力がかかることで曲がるか」が解析可能である.本研究により,屈性研究に物理学による新しい視点を与えることで,植物特有の物性を生かした新規の機能性材料への応用が期待される.
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研究実績の概要 |
今年度は,植物の茎の屈性動態の定量的評価および力学的な安定性の評価を行い,特に数理モデルの開発により姿勢制御機構の解明へ迫る研究成果を論文として発表した.また,植物棒状構造であるイネに関して節間を考慮した力学モデルを開発し,倒伏する際のたわみを評価する手法を開発し論文にまとめた.今年度の助成金は,研究成果論文の掲載料や物理学関連図書の購入に充てた.
1. 植物の姿勢制御の力学的原理に関する論文はScientific Reports誌に掲載された.本論文では,植物がどのように身体を曲げ、そして曲げ過ぎないように姿勢を正しているのかを明らかにするために,野生型と姿勢制御変異体を比較を行った.茎を変形する棒とみなす弾性棒理論を応用し,茎が曲がる過程で、どこにどのような力がかかるのかを定量的に示す方法論の確立に,初めて成功した.この力学モデルから、茎が曲がり過ぎると茎の中間領域で力学的な不均衡を起こし,不安定な姿勢になることがわかった.すなわち,植物が姿勢正しくまっすぐに伸びることは,力学的に有利であることが示された.本研究の成果は,重力屈性の謎を「力学」という新たな視点から展開できる可能性を示している.
2. 農作物であるイネの倒伏耐性に関する論文はScientific Reports誌に掲載された.本論文では,イネなどの穀物が自重や暴風などにで倒伏する被害を低減させるため,これまで確立されていなかった特性の異なる品種間を比較する方法を開発した.材料力学の弾性柱理論を応用し,どのような形あるいは硬さの条件でイネが倒伏するかを定量的に明らかにする力学モデルの構築に初めて成功した.この力学モデルを用いた解析により,穂に最も近い節間の特性が自重で倒れないために重要であることが明らかになった.この研究成果から,力学理論と育種学の融合により,倒伏耐性が向上した新たなイネ品種の作出が期待される.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画当初の力学モデル駆動型の方法論が運用でき,モデル植物のシロイヌナズナの茎の屈曲過程のみならず,同様の棒状構造を持つイネなど他植物への応用研究にも波及している.考察の起点となる力学の視点は従来の植物科学では捉えられていなかった姿勢安定性の原理的な側面を浮き彫りにし,植物と物理学を融合させる新たな学術展開を開きつつある.イネのたわみ・倒伏耐性についても,弾性方程式による定量化が起点となり植物育種や品種改良にもつながったことが重要な学術的進展であると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
期間延長申請を希望し,最終年度で本研究成果の総仕上げとして,根の重力屈性を対象としたデータ解析およびモデル解析結果を学術論文として発表することを目指している.
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