研究課題/領域番号 |
20K15843
|
研究種目 |
若手研究
|
配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分44050:動物生理化学、生理学および行動学関連
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
松村 律子 山口大学, 時間学研究所, 助教(テニュアトラック) (20728216)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
|
キーワード | 概日時計 / 時計遺伝子 / PERIOD / タンパク質相互作用 / PERIODタンパク質 / 相互作用 / CRISPR/Cas9 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、先行研究や予備データから時計タンパク質PERIOD(PER)同士の相互作用に着目し、概日時計機構における機能をマウス個体レベルで検証するものである。そのために、ゲノム編集によってPER同士の相互作用が失われた変異マウスを作成し、行動リズム等の変化から概日時計への影響を調べる。概日時計とは、睡眠・覚醒・摂食といった行動や、体温・血圧・ホルモン分泌などの生理現象に、概日リズム(約一日周期のリズム)をもたらす生体機能である。本研究により、概日時計の分子メカニズムを支える重要な因子の一つであるPERの未解明の機能を明らかにする。
|
研究実績の概要 |
本研究では、これまでに、PER1とPER3との相互作用に重要な役割を果たすアミノ酸Yをin vitro実験により同定し、同アミノ酸にゲノム編集により変異を導入した培養細胞では、細胞自律的な概日時計の周期長が短縮することを見出していた。本年度は、この培養細胞においてPER1-PER3相互作用が弱まっていることを免疫沈降実験により内在レベルで確認することができた。 また、初年度の細胞免疫染色実験より詳細な分析を行うため、独自に構築したAIを用いて二重染色による強制発現タンパク質の細胞内局在解析を行った。AIを用いることにより、5つの局在パターンに分けての分析が可能になるとともに、両者が十分に発現している細胞に絞って、客観的に効率よく相互の局在関係を解析することが可能となった。解析の結果、両タンパク質の核内移行は、相互に増強し合っており、アミノ酸Yの変異によりその機能は失われることが明らかとなった。 これらの結果を受けて、当初の研究計画の目的である動物個体での実験へと進んだ。AdAMSの支援をいただき、CRISPR/Cas9を用いたゲノム編集により、アミノ酸Y変異Per3マウスを作成した。作成に当たっては、当初導入予定であったミスセンス変異と、実際にゲノム編集培養細胞で得られた変異配列を導入した2系統を作成することとした。ジェノタイピングの結果、1系統はホモ個体として、もう1系統はキメラ個体としてF0マウスを取得できた。 以上のように、本年度は細胞レベルでのPER相互作用の機能の検証を経て、変異マウス作成へと計画通り研究を進展させることができた。来年度は、作成したマウスを用いて、行動リズムや位相調節機能など個体レベルで表出する概日時計機能に関する表現型を検証し、これまでの実験結果を踏まえてその分子メカニズムについて検討する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、目的の変異マウスを作成でき、個体レベルでのPER相互作用の機能解析実施の見通しがたったため、おおむね順調とした。
|
今後の研究の推進方策 |
作成した2系統の変異マウスについて、交配により変異ホモ個体数を増やすとともに、順次恒暗条件下での行動量リズム解析を行う。このリズムは、個体がもつ固有の概日時計周期長を反映するため、変異マウスは野生型に比べて周期が短くなると想定される。また、通常の明暗条件を数時間ずらすと、行動リズムは新しい明暗周期に同調するようになるが、同調にかかる時間から、位相調節能を測る。さらに、細胞自律的な概日リズムを発光に置き換えモニターすることを可能にするレポーター遺伝子Per2-Lucを、交配により変異マウスに導入する。このマウスを用いて肝臓や肺など組織レベルの概日時計機能にも影響があるのかを、スライスした組織片の発光リズムを測定することにより解析する。以上のように、今後の研究では、変異Per3マウス個体を用いて概日時計機能への影響を調べ、PER同士の相互作用が持つ個体レベルでの機能的意義を明らかにする。
|