研究課題/領域番号 |
20K15846
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分44050:動物生理化学、生理学および行動学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
原 佑介 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所 神戸フロンティア研究センター, 主任研究員 (20749064)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2020年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | 脂肪酸 / インスリン / 生殖 / 休眠 / 順化 / ショウジョウバエ / 食性 / 温度 / Cl-チャネル / 電気生理 / キイロショウジョウバエ / yolk protein / GFPマーカー / Patch-seq / 恒流動性適応 |
研究開始時の研究の概要 |
低温条件下のショウジョウバエは不飽和脂肪酸を多く含む植物性の餌を好んで食べる。これは膜の流動性を増加させ、低温耐性を個体に賦与する。植物性の餌を食べた個体の脳内では、インスリン産生細胞(IPC)で特異的にリポタンパク質の量が変化する。このIPCという細胞は、本種の休眠を司る細胞である。この事実は、食性の変化がIPCの膜の流動性の変化を通じて休眠に作用する可能性を示唆している。すなわち、温度依存的な食性の変化は、IPCの膜特性に作用し、休眠の適否を直接左右するものと推察される。そこで、本研究は温度変化に伴う食性の変化とIPCの機能、及び休眠の相互関係を解析し、順応を担う体内機構の実像に迫る。
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研究成果の概要 |
キイロショウジョウバエの成虫雌が示す温度依存的な脂質選好性の変化が、本種の卵巣休眠とそれを制御する脳内中枢ニューロン、IPCの機能にどのような変化をもたらすのかを解析した。不飽和脂肪酸を多く含む餌で飼育した成虫雌では、卵巣発育が抑制された。また、この条件で飼育した成虫雌のIPCでは、通常の餌での飼育時に観察される興奮性の寒冷応答が抑制された。この抑制には特定の脂肪酸が関与していた。また、不飽和脂肪酸摂取時にIPCにおいて発現変動する遺伝子が複数同定された。これらの結果から、脂質選好性の変化はIPCの電気的特性と遺伝子発現を劇的に変化させ、生殖機能の制御に作用するものと考えられる。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究成果により、餌として食べた脂肪酸が、特定の中枢ニューロン(IPC)をターゲットとすることで、内分泌ネットワークと神経ネットワークの機能を一気に切り替え、個体丸ごとの代謝と行動の適応的変化とを惹き起こすという、ホメオスタシス制御の新しいフレームワークが見えてきた。IPCは哺乳類の膵β細胞や視床下部ニューロンとの機能的類似性が示唆されていることから、本成果は我々ヒトを含む多様な生物の適応機構を模索する上でも重要な知的基盤となり得る。
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