研究課題/領域番号 |
20K15858
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
東山 大毅 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (40816625)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 脊椎動物 / 進化 / 発生 / 神経堤細胞 / 形態学 / ワニ / マウス / カメ / 形態 / 解剖 / 顎顔面 / 空間トランスクリプトーム / 頭部 / 顔面 / 哺乳類 / 顔面形成 / 進化発生学 / 骨格 / 形態形成 |
研究開始時の研究の概要 |
動物の形態は多様でありながらも一定の「ボディプラン」、構造の相対的位置関係が保たれる。これが成り立つ背景にある機構はいまだ解決されない大きな問題だ。本研究の代表者はこれまで「少なくとも顔面においては、(たとえ原基同士が融合し物理的な境界が失われてさえ)発生原基と解剖学的構造が実際に頑健に対応する」という成果を実験的に示した。本研究課題はこのモデルを主に用いながらもさらに拡張し、「顔面以外ではどの程度成立するのか」「逸脱できる構造はどのような条件で逸脱するのか」など、より一般性に向けた議論を発展させてゆくものである。
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研究実績の概要 |
脊椎動物の頭部は複数の顔面原基から構成されており、それらの組合せ方によって骨格や神経など、多くの解剖学的構造の位置関係が決定づけられる。これは古くから教科書的に知られる知識ではあるものの、では実際にどの構造が対応しどのような条件で破綻するか、それらが動物間の様々な顔の差異をどう形作るかといった検証はほぼ無い。この現象を知ることは、複雑な解剖学的構造を伴う我々の形態を法則的に理解する上での必須な知見となるだろう。 当該年度は、前年度までに得たワニ胚の高解像度CTスキャンデータをもとに三次元構築を進めた。その過程で、ワニや鳥を含む主竜類の外群にあたるカメ類のデータが必要になったため、スッポン(Pelodiscus sinensis)やクサガメ(Mauremys reevesii)の胚の組織切片作成と三次元構築をおこなった。こうして見えてきたのは、カメやニワトリでも顔面原基と末梢神経のような構造との対応関係は頑健に保たれていること、そしてワニ類の上顎においてのみ、この関係性が破綻していることである。本成果は現在、論文として取りまとめる準備をおこなっている。 また、前年度の推進方策で予定した通り、神経のような複雑な解剖学的構造を含めた頭部、特に顎顔面の発生と進化は極めて難解であることから、発生と進化についての総説と展望をまとめることにも注力した。その結果、現在マウスの頭部形態形成を中心とした総説、口唇口蓋裂についての展望をはじめ、いくつかの原稿が同時に進行している。 また、われわれの心臓に分布しその機能を維持する冠動脈が、羊膜類の成立において祖先的な血管系のリモデリングで初めて生じた構造であることを示し、出版した。これは前年度から進めていたもので、頭蓋顔面の研究と同様のロジックが心臓など他の身体構造においても適用できることを示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当該年度は研究成果は多く得たものの、前年度予定していた取り纏めと論文の出版までには至らなかった。これは、所属研究室の閉鎖や、出産・育児などのイベントが重なったことにも関係している。また、マウスの空間トランスクリプトームデータをもちいた研究計画も、共同研究者との予定の都合上、あまり大きく進めることはできなかった。 その一方で、国内外での研究発表や和文での研究紹介の執筆の機会は多く、これまでの成果の広報をはじめ将来的な研究へ繋がる議論も深まったことは評価される点だろう。
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今後の研究の推進方策 |
1年間の延長期間において、これまでのデータをとりまとめ、論文化する。 ①マウス顎顔面の形態形成を中心とした総説と展望、②口唇口蓋裂など疾患研究における我々の研究の意義、③ワニ類に見られる顔面原基と解剖学的構造の位置関係の破綻(それが地質年代においていつ、何によって生じたのかを考察)である。 それらに加え、当該年度は思うように進められなかったマウス空間トランスクリプトームデータをもちいた研究を進める。これまでの常識ではマウスの咽頭胚中期において神経堤間葉どうしの細胞型の差はあまりハッキリしていなかったのだが、我々のデータはどうやらそこに異なる細胞型の集団がいくつか存在することを示している。これがどんな細胞型なのか。またそれが同時期の解剖学的構造(三叉神経など)とどう対応付けられるのかを調べ、今後「どういう機構で顔面原基のモジュール性が維持され、破綻してゆくのか」という現象を解き明かすうえでの足場とする。
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