研究課題
若手研究
双翅目昆虫は植物の重要な送粉者である一方、植物が双翅目に対しどのような適応を遂げ、どのような戦略をもって彼らを誘引しているかに関する知見は少ない。本研究では、「特定の双翅目に送粉される植物は、それぞれの送粉者の生態や生活史に合わせた独自の適応をしており、特に花香に顕著な適応がみられる」という仮説を提唱し、タマバエ媒花など生態が未知な双翅目媒花において、そのバイオロジーを花香化学成分レベルで明らかにする。一般に双翅目は「ハエ」と一括りにされるが、その中には複数の送粉者機能群を内包しており、植物はそれぞれの機能群へfine-scaleな適応を遂げていると予想される。
本研究は、これまで一概に「ハエ」ととらえられてきた双翅目昆虫が、植物の花の適応に及ぼす影響について明らかにすべく、研究を行った。ニシキギ属、カモメヅル属植物などを対象に調査を行ったところ、ヌカカ科、タマバエ科、キノコバエ科、キモグリバエ科といった、異なる科の双翅目によってのみ送粉される植物が見出された。これらの植物について、花の匂いを調べたところ、送粉者タイプによって、花の匂いの成分が大きく異なることが明らかになった。このことは、植物が、双翅目の各グループに対し、独自の適応を遂げている可能性を示唆している。
被子植物の花の多様性は、生物多様性を象徴する現象の一つである。大多数が動物に送粉される被子植物においては、送粉者との相互作用が花の進化に重要な役割を果たすとされてきたが、具体的な研究は、ハチや鳥、チョウなど、大型の送粉動物に限られてきた。双翅目昆虫は、ハナバチに次いで多くの植物の受粉を行うことが予測されているものの、植物との進化的関係性はほとんど理解されていないのが現状である。本研究からは、これまで「ハエ」と一括りにされがちであった双翅目昆虫が、植物の花の多様化をもたらしたことを示唆する、新しい知見が得られた。
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