研究課題/領域番号 |
20K15877
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
丸尾 文乃 中央大学, 理工学部, 共同研究員 (70807297)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 植物繁殖生態 / 蘚苔類 / 極限環境 / 南極 / 有性生殖 |
研究開始時の研究の概要 |
生物の繁殖機構は生育環境によって変化するのか、という問いを解明するために、地球上で最も低温かつ短い生育可能期間の生育環境である南極に生育する蘚類(コケ植物)の繁殖状況を植物体の形態、遺伝子、光合成活性能力から明らかにすることにより、繁殖生態学の古くからの学術的疑問である「生育に適さない環境では有性生殖の割合が減少する」と本研究で新たに立てた仮説である「群落内のオスの割合が減少する」を明らかにする。また気候変動の影響が現れやすい南極の蘚類の繁殖状況から「気候変動は生物の繁殖機構にどのような影響を及ぼすのか」という問いに答えるのが、本研究である。
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研究実績の概要 |
生物の生殖機構は生育環境によって変化するのか、という問いを解明するために、地球上で最も低温かつ短い生育可能期間である南極に生育する蘚類の繁殖状況を形態学、遺伝子工学、生理生態学、過去の標本との比較から明らかにすることにより、繁殖生態学の古くからの学術的疑問「生育に適さない環境では有性生殖の割合が減少する」と、本研究オリジナルの仮説である「オスの割合が減少する」を明らかにしている。また気候変動の影響が現れやすい南極の蘚類の繁殖状況から「気候変動は生物の繁殖機構にどのような影響を及ぼすのか」という問いに答えるのが、本研究である。 ●昨年度から引き続き、南極産サンプルの外部形態の観察により生殖状況の確認を行った。南極産サンプルの植物体を顕微鏡下で解剖・観察し、生殖器官である胞子体・配偶子嚢の形成数とサイズを測定し、南極における蘚類の有性生殖の状況の把握に努めている。 ●南極産サンプルの群落内の遺伝子の多様度を測定するために、各サンプルのDNA解析のウェット部分を完了した。本研究ではMIG-seq法により、群落内の遺伝子の多様度を測定した。解析のために必要な量のDNAを抽出するために既存手法に独自の工夫を施すことにより、植物体が小さく、十分な量のDNA抽出が難しい南極産サンプルのDNA解析が可能となった。現在はDNA解析結果のデータ解析中(ドライ解析)である。 ●南極産サンプルの胞子発芽条件の検証を行い、南極産サンプルの発芽に適した培地を文献情報から絞り込んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生物の生殖機構は生育環境によって変化するのかを明らかにするために、本研究では、「生育に適さない環境では有性生殖の割合が減少する」、「オスの割合が減少する」と「気候変動が蘚類の生殖機構にどのような影響をもたらすのか」という疑問の解明に取り組んでいる。 「生育に適さない環境では有性生殖の割合が減少する」と「オスの割合が減少する」を明らかにするために、生育に適さない環境として、低温・短い生育可能期間・乾燥が顕著な環境である南極に現在生育する蘚類の生殖状況から有性生殖とオスの減少を確認することを目的とし、植物体の外部形態から生殖状況を把握すること、繁殖エネルギー獲得能力の雌雄差を明らかにすること、有性生殖が実質的に成功しているかを胞子の発芽能力と群落内の遺伝子の多要度から評価すること、フェノロジーの把握という研究計画を策定している。もう一方の問いである、「気候変動が蘚類の生殖機構にどのような影響をもたらすか」を明らかにするために、標本庫の標本と現在のサンプルの繁殖状況及び過去と現在の気象情報を比較し気候変動に伴う生殖機構の変化を捉える予定である。 現在までに、最初の問いである「生育に適さない環境では有性生殖の割合が減少する」の解明に取り組んできた。具体的には南極に生育する蘚類の有性生殖の状況の解明に着手し、南極産サンプルを解剖・観察し、胞子体・配偶子嚢の形成数、サイズを測定した。また、有性生殖が実質的に成功しているかを評価するために、群落内の遺伝子の多様度を測定しDNA解析のウェット部分は完了した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は引き続き、南極産サンプルから現在の南極の蘚類の繁殖状況から有性生殖・オスの減少を確認するために、南極産サンプルの外部形態の観察による繁殖状況の確認を進めていくとともに、有性生殖が実質的に成功しているかを群落内の遺伝子の多様度から明らかにするためにDNA解析のドライ解析の完了を目指す。またこれらの結果をまとめ論文として成果発表を行う。さらに過去と現在の繁殖・気候情報の比較に着手し、標本庫の標本の繁殖状況の把握に努める。 本来の研究計画にあった南極におけるフェノロジーの把握は感染症による南極観測計画の大幅な変更に伴い、本研究期間内の遂行は困難であることが判明したため断念する。 またオス、メスの生理生態の違いを光合成活性から把握することに関しても研究機器の都合により本研究内の遂行は困難であることが判明したため断念する。
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