研究課題
若手研究
日本人は平均寿命の延伸により、かつてないスピードで超高齢社会を迎えた。超高齢社会を背景とする骨粗鬆症とサルコペニアは生活習慣や栄養状況、運動機能が関連するなど共通点が多く、罹患率は年々増加しており、健康寿命低下につながる重要な問題である。骨粗鬆症性骨折、サルコペニア増悪、不活動と悪循環が生じると、高齢者にとって脱却は容易ではない。一方、内閣府の調査によると「健康である」と答えた高齢者も約25%存在し、加齢による機能低下には多様性が関与していると考えられる。そこで、高齢者における骨粗鬆症とサルコペニアの有病率を調査し、骨粗鬆症要因とサルコペニア要因を多面的に検討し、相互関連を明らかにする。
40歳以上の女性80名を対象とした。海綿骨骨密度低下は65名 (81.3%)、皮質骨厚低は60名(75.0%)であった。海綿骨骨密度低下群は年齢が有意に高く、椅子立ち上がり時間が有意に長く、FRTが有意に短く、併存疾患ありの割合が有意に高かった。海綿骨骨密度低下を従属変数としたロジスティック回帰分析の結果、年齢、BMI、飲酒習慣、併存疾患の有無を調整後も、FRTのオッズ比は1.14(95%信頼区間:1.01-1.27)で、FRTが短いことは海綿骨骨密度低下と有意に関連していた。中高年女性において、FRTが短いことは海綿骨骨密度低下と有意に関連していた。
地域在住日本人中年女性において、バランス能力の指標であるFRTが短いことは海綿骨骨密度低下の有意な決定因子であった。しかし、皮質骨厚とは有意な関連がみられなかった。閉経を目前とした中年女性の骨健康に関して、バランス能力の維持向上が骨粗鬆症や脆弱性骨折の予防因子となることが示唆された。生理人類学の観点からバランス能力や骨量の変動は環境や生活状況の変化に対する人類の適応能を理解するうえで役立つと考える。
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PLoS One
巻: 19 号: 1 ページ: e0296457-e0296457
10.1371/journal.pone.0296457