研究課題/領域番号 |
20K15915
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分46020:神経形態学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
江川 遼 名古屋大学, 医学系研究科, 助教 (20722226)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2021年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | オリゴデンドロサイト不均一性 / 両耳間時差 / ニワトリ胚 / 髄鞘 / エレクトロポレーション |
研究開始時の研究の概要 |
オリゴデンドロサイトは脳領域ごとに異なる形態や遺伝子発現を示す。このオリゴデンドロサイトの不均一性(heterogeneity)は、両耳間時差を検出する脳幹聴覚回路において左右の耳に入力する音情報の正確な統合に重要であると考えられている。本研究では、申請者が独自に確立したニワトリ胚脳幹聴覚回路における細胞種特異的な遺伝子操作技術と3次元回路形態の定量解析技術を駆使して、オリゴデンドロサイトの領域差が形成される過程を詳細かつ多角的に解析する。さらに機能的介入によりオリゴデンドロサイト不均一性を生み出すメカニズムにアプローチする。
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研究実績の概要 |
オリゴデンドロサイトは脳領域ごとに異なる形態や遺伝子発現を示す。このオリゴデンドロサイトの不均一性がどのような機能的意義を持ち、どのように生み出されるのかについてはまだほとんど理解が進んでいない。脳幹聴覚回路では、領域ごとに異なる長さのミエリンを形成して軸索配線の伝導距離の差を相殺することで、左右の耳に入力する音情報を正確に統合している。それによってマイクロ秒レベルの時間差(両耳間時差)を検出し、音源定位に寄与する。本研究では、研究代表者が独自に確立した複数の実験技術を駆使して、両耳間時差の検出を支えるオリゴデンドロサイト形態の領域差を多角的に解析し、領域差を生み出すメカニズムを明らかにすることを目的とする。 令和3年度は、ランビエ絞輪の成熟過程における領域差の有無について検証した。ランビエ絞輪はミエリンに挟まれた軸索領域で、電位依存性ナトリウムチャネルをはじめとする分子群が集積している。発達過程では、まず片側のみにミエリンが接するヘミノードを形成したのち、両側にミエリンが接する未熟ノードとなり、さらに分子局在の区画化と短縮化が進んだ成熟ノードとなる。脳幹聴覚回路においては、E15からヘミノードがみられはじめ、P3でほぼすべてが成熟ノードとなった。各発達段階におけるランビエ絞輪の形態に領域差はみられなかったことから、ランビエ絞輪の成熟は各領域で同時に進行することが示唆された。その他、いくつかの技術的課題解決に着手し、オリゴデンドロサイト前駆細胞の標識、免疫染色した200umスライスでの高解像度3Dイメージング法、A3Vによる大細胞核ニューロンの感染効率向上、脳幹聴覚回路の発達過程を再現可能な後脳の器官培養法といった複数の技術を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度はミエリンを形成する軸索側の発達過程について重要な知見を得るとともに、脳幹聴覚回路の発達メカニズムを研究する上で重要となるいくつかの要素技術を確立した。この点において、当初の計画どおりの進展を遂げていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの研究から、大細胞核ニューロンから分泌される放出性の伝達物質によって神経核近傍領域においてオリゴデンドロサイト前駆細胞の分裂が促進され、対側投射領域よりも細胞密度が高くなっている可能性が示唆された。令和4年度は、これまで確立した要素技術を組み合わせ、成熟オリゴデンドロサイトの密度やミエリン長の変化についても定量的に解析するとともに、オリゴデンドロサイト前駆細胞のカルシウムイメージングにより放出性の伝達物質の特定を目指す。
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