研究課題/領域番号 |
20K15932
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分46030:神経機能学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小林 曉吾 九州大学, 理学研究院, 助教 (40867735)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 記憶エングラム / 海馬 / 文脈恐怖条件付け / カルシウムイメージング / 抑制性細胞 / 記憶痕跡細胞 / 遺伝学的標識 / 海馬歯状回 / 文脈依存的恐怖条件付け学習 / 文脈依存的恐怖条件付け |
研究開始時の研究の概要 |
約1000台のコンピュータを3日間稼働させ続けることで、Google社の人工知能は猫の画像を認識できるようになった。しかしネズミは、イエネコが誕生する1万年前よりももっと古い時代からネコ目動物を危険な捕食者として認識してきた。このように生物が長い年月をかけて発達させてきた高度な知性の一つとして「記憶の汎化」があげられるが、その神経メカニズムは謎のままである。そこで本研究では、マウス海馬領域に存在する特定の記憶情報を保持する細胞(エングラム細胞)に神経入力する抑制性細胞を標識し、その神経活動のモニターと活動操作を実施することで、記憶の汎化を制御する神経メカニズムの解明を目指す。
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研究実績の概要 |
時空間情報(いつ、どこで)に関連した記憶・学習の成立には、脳海馬が深く関与することが知られてる。しかしながら、海馬神経細胞の活動パターンは、時間経過や外部刺激入力によって大きく活動状態が変化することが先行研究により明らかにされている。この知見は、海馬神経細胞の全体レベルにおける時空間情報コーディングはとても動的であり、ある意味では安定性を欠く”あいまい”なものであることを示唆している。 海馬における情報コーディングの安定性・曖昧さに寄与する神経基盤の解明を目的として、記憶エングラム細胞と、記憶エングラム細胞に神経入力する抑制性細胞の可視化を実施した。レポーター遺伝子で標識されたそれぞれの細胞の数をカウントしたところ、(1)「記憶エングラム細胞」として標識される細胞の数は、マウスを飼育ケージ内に静置していたコントロール群よりも、条件付けチャンバーに暴露した実験群においてより多い傾向があった。また同様に、(2)「そのエングラム細胞に投射する抑制性細胞」として標識される細胞の数も、飼育ケージコントロール群よりも、条件付けチャンバー実験群において増大する傾向が観察された。続いて、「記憶エングラム細胞」と「その記憶エングラム細胞に投射する抑制性細胞」としてレポーター遺伝子で標識されたそれぞれの細胞の種類について免疫組織化学染色法を用いて同定を行ったところ、(1)「記憶エングラム細胞」として標識される細胞の種類は、ほぼ全てが興奮性細胞であった。一方で、(2)「その記憶エングラム細胞に投射する抑制性細胞」として標識される細胞の種類は、複数種類の細胞タイプが検出された。続いて、記憶エングラム細胞の神経活動をカルシウムイメージング法により計測した。現在までに計8個体のマウスCA1領域から約200個の記憶エングラム細胞および約2,100個の非記憶エングラム細胞の活動計測に成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに計8個体のマウスCA1領域から約200個の記憶エングラム細胞および約2,100個の非記憶エングラム細胞の活動計測に成功しており、おおむね順調に研究が進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度から引き続き、「記憶エングラム細胞」と「その記憶エングラム細胞に投射する抑制性細胞」の両方を標識する実験手法について、その標識精度の改善についてより実験条件の検討を進めていきたい。また、カルシウムイメージングにより得られた記憶エングラム細胞の神経活動データについても詳細な解析を実施していく予定である。
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