研究課題
若手研究
生体膜の主要な構成成分であるリン脂質分子は2つの脂肪酸部位を有するがその構造は大きく異なる。すなわち、リン脂質のグリセロール骨格のsn-1位にはステアリン酸(18:0)などの飽和脂肪酸または一価不飽和脂肪酸が、sn-2位にはアラキドン酸(20:4)などの不飽和脂肪酸が主に分布する。本研究ではこれまで不明であったsn-1位の脂肪酸種を規定するリゾリン脂質アシルトランスフェラーゼ(LPLAT)の解析からリン脂質sn-1位の脂肪酸種が変化することが生物に対してどのような影響を及ぼすのか、さらにはsn-1位に異なる脂肪酸を持つリン脂質分子それぞれがどのような生物学的機能を制御しているのか解明を目指す。
これまで生体膜を構成するリン脂質分子のsn-1位脂肪酸決定機構に関する知見は乏しく、その生物学的意義も不明であった。本研究によりリン脂質分子のsn-1位脂肪酸決定に関わる分子としてLPGAT1とLPEAT2が見出された。また、遺伝子欠損動物の解析からリン脂質sn-1位脂肪酸のクオリティが動物個体の複数臓器の正常機能に必須であることが示され、リン脂質sn-1位脂肪酸種に支配される高等生物の生命現象の存在が明らかとなった。
リン脂質のsn-1位脂肪酸種は多くの生物において普遍的であり、進化的にもよく保存されている。その形成に関わる分子が同定されたことは多くの生物に共通するリン脂質形成機構を理解する上で重要であり、学術的な意義は大きいと考えられる。生体膜の主要な構成成分であるリン脂質分子の質は様々な生命現象や疾患との関わりも示唆されていることからリン脂質形成機構の理解はヒト疾患の診断や治療への応用も将来的に期待される。
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Scientific reports
巻: 12 号: 1 ページ: 7312-7312
10.1038/s41598-022-11002-4