研究課題
若手研究
シトクロムP450酵素(P450)RosCはマクロライド系抗生物質rosamicinの生合成に関与し、抗菌活性に影響する基質の同一部位を3段階酸化修飾する。一般的なP450は基質を一回のみ酸化修飾するが、RosCは如何にして多段階の酸化修飾を可能とするのか。そのメカニズムは大変興味深い。また、複数回の酸化反応は化学構造の多様化を導くが、目的物質の選択的且つ効率的な生産という側面では反応を制御することが重要な課題となる。そこで、野生型RosCと特定の酸化反応のみを触媒する変異体の酵素反応速度論的解析と立体構造解析によるアプローチから多段階酸化型P450に関する新たな知見を得る。
単一酵素でありながら酸化反応を複数回触媒する多機能型のシトクロムP450酵素(P450)は、抗生物質をはじめとする天然化合物の構造と生物活性の多様性を生み出す魅力的な酵素である。本研究では、マクロライド系抗生物質の生合成で基質同一部位を3段階酸化修飾するP450 RosCを対象として、野生型と最初の酸化反応だけを触媒する変異体との基質親和性とX線結晶構造の比較解析により、RosCが多段階の酸化修飾を可能とする、またその反応を制御する要因の一端を明らかにした。
野生型RosCと変異体の結晶構造解析により多段階酸化修飾に重要なP450の立体構造を見出すことが出来た。本結果は、多機能型P450を目的の反応だけ触媒するように制御できる可能性を示し、工業的にも重要な多機能型P450を利用した目的物質の選択的且つ効率的な生産に貢献することが期待される。また、、本成果に基づいて基質を1回のみ酸化修飾する大多数のP450を多機能型P450へと機能改変することで、新たな有用物質の創出にも繋がる。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)
Journal of Industrial Microbiology and Biotechnology
巻: 49 号: 1
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Applied Microbiology and Biotechnology
巻: 105 号: 7 ページ: 2647-2661
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