研究課題
若手研究
我々は、切除不能進行膵がんにおいて、FOLFIRINOX療法(FX)による重篤な好中球減少は生存期間の延長と有意に相関することを報告しており(Cancers.2018,10,454)、そのメカニズムとして、Myeloid derived suppressor cell(MDSC)の関与を考えた。MDSCsは未熟な骨髄細胞であり、がんや炎症により末梢血中に誘導され、強力な免疫抑制作用を示す。膵がん患者で末梢血中MDSC増加の程度が大きく、その関与が多いと考えられる。本研究では、FXが投与される膵がん患者の効果判定のバイオマーカーとして、好中球減少やMDSC濃度変化と治療効果の関係を明らかにする。
重篤な好中球減少発現患者では、骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)が低下している可能性があり、抗がん薬の有効性指標となる可能性がある。まずMDSC濃度測定系確立のため、ヒト培養白血病細胞HL60、NB4、KG-1を用いて条件検討を行い、フローサイトメトリー解析にて全ての細胞をCD11b+CD14- CD33+として分離できた。さらに、重篤な好中球減少をMDSC低下のサロゲートマーカーとし全生存期間(OS)との関連を検討した。トリフルリジン塩酸塩とベバシズマブの投与患者で、不死時間バイアスを考慮した時間依存性Cox回帰分析を行い、重篤な好中球減少とOSの延長が有意に関連することを明らかにした。
本研究では、骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)濃度測定系の確立を行ったのちに、トリフルリジンチピラシル塩酸塩とベバシズマブ併用療法の重篤な好中球減少をMDSCの低下のサロゲートマーカーと仮定し、治療効果との関連を検討した。本研究で、ヒト検体を用いてMDSCを測定することはコロナ禍でできなかったが、時間依存性COX回帰分析を用いて、重篤な好中球減少と治療効果との関連を明らかにできたことで、重篤な好中球減少を指標にしたがん化学療法の治療効果予測の可能性を高めることにつながった。今後ヒト検体を用いて、MDSC濃度を調べることで治療効果の向上に大きく貢献できるものと考える。
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すべて 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 9件、 査読あり 13件、 オープンアクセス 7件)
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