研究課題
若手研究
アルツハイマー病(AD)に代表される各種tauopathyは、患者脳の病変部位へのタウ蛋白(tau)の蓄積を特徴とする。病的Tauはそれ自身が鋳型となって正常tauを自分と似た形に変化させながら、疾患ごとに異なる異常構造を取って蓄積する。本研究では「Tauはどのような機構で異種tauopathy間で見られるような構造の異なる凝集体となるのか」を明らかにする。Tauの353から368番目までの配列に、ADとそれ以外の鋳型tauを区別する役割が見いだされており、そのアミノ酸配列に着目して、細胞・試験管および動物モデルを用いながら、tauopathy間に違いが生じる機構の解明を目指す。
2023年度は、4R tau isoformの蓄積を特徴とするtauopathyである皮質基底核変性症(CBD)、進行性核上性麻痺(PSP)に着目し、それぞれの疾患由来のtau seedを用いることで、CBD、PSPにおける凝集責任部位の探索を細胞モデルを用いて行った。結果として、C末端領域に属するある6つの連続したアミノ酸残基をAlaで置換することにより、PSP seedでの凝集は減少させるが、CBD seedでの凝集には影響を与えない部位の同定に成功した。加えて、アルツハイマー病(AD)におけるtauの凝集責任部位として同定したAsn-368の欠損変異をホモで持つマウスである「Δ357KI」の作出に成功した(ヒトAsn-368はマウスAsn-357に相当)。続いて、Δ357KIと野生型マウス(C57BL/6J)の線条体に脳定位固定装置を用いてAD seedを注入してAD tau病理形成を誘導した後に病理解析を行った。その結果、野生型マウスについては線条体領域に明らかなtau病理が生じたのに対して、Δ357KIではtau病理の形成が全く見られなかった。よって、Asn-368変異がtauのAD seedingを抑制する効果が、in vivoにおいても見られることが示された。当初の目的であった、tauのC末端配列353-368中のseed依存性凝集に対する責任部位の同定については、AD seedに対するものとしてAsn-368を特定し、ここまでの結果を論文にまとめて報告している。加えて、Asn-368の変異効果がin vivoでも示されることを、ヒトtauにおけるAsn-368に相当するAsn-357の欠損変異をノックインしたΔ357KIマウスを用いて示すことができた。また、353-368とは別の配列から、CBDおよびPSP seed凝集を抑制する変異部位の同定にも成功した。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)
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