研究課題/領域番号 |
20K16235
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49040:寄生虫学関連
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研究機関 | 長崎大学 (2021-2022) 愛媛大学 (2020) |
研究代表者 |
馬場 みなみ 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (00814906)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2021年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2020年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | マラリア / Plasmodium berghei / スポロゾイト / 侵入 / 肝細胞 / RON4 / 分泌 / 肝臓感染 / sporozoite / plasmodium / invasion / liver stage |
研究開始時の研究の概要 |
マラリア原虫は蚊の体内で発育し、哺乳類への感染型であるスポロゾイトとなる。スポロゾイトは自律的に蚊の唾液腺に侵入し、蚊の吸血とともに哺乳類体内に打ち込まれ、血管へと侵入する。血流に乗ったスポロゾイトは肝臓へと到達、肝類洞壁を通過し、肝実質へと侵入、肝細胞に感染する。本研究はスポロゾイトが、蚊の唾液腺、哺乳類の血管内皮細胞と肝細胞、これらの全く異なる種類の細胞に侵入・通過・感染するためのメカニズムを明らかにする足がかりとして、いずれの過程にも関与を見出した分泌型タンパク質RON4と、その複合体分子の各侵入ステップにおける作用機序を明らかにする。
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研究実績の概要 |
マラリア原虫は蚊の中腸壁で発育し、哺乳類への感染型であるスポロゾイトとなる。スポロゾイトは自律的に蚊の唾液腺に侵入し、吸血とともに哺乳類体内に打ち込まれ、血流に乗って肝臓へと到達、肝類洞壁を通過して肝細胞に感染する。本研究はスポロゾイトが、全く異なる種類の細胞に侵入・感染するためのメカニズムを明らかにするための足がかりとして、分泌型タンパク質RON4の各ステージにおける作用機序を明らかにすることを目的としている。 前年度はスポロゾイトの運動性や肝細胞への接着・侵入にRON4が関与しているかをRON4を明らかにするため、RON4 C末端にmCherryを融合させた原虫(RON4-mCherry)を用いてRON4タンパク質の発現パターンを観察した。さらにRON4の発現を抑制することでスポロゾイトの運動性が大きく抑制されたため、移動中のスポロゾイトがRON4を分泌しているかを知るため、スライドグラス上で滑走運動をさせたスポロゾイト表面を染色した。その結果、スポロゾイト体外にRON4シグナルが観察された。このことから、スポロゾイトは滑走運動中にRON4を分泌していることが示唆された。 スポロゾイト体外に分泌されているRON4が肝細胞への侵入に関与するかを明らかにするため、唾液腺スポロゾイトに抗RON4抗体を処理し、培養肝細胞への感染効率をコントロール群と比較した。その結果、コントロール抗体処理群では抗体非処理群と同等の感染効率であったが、抗RON4抗体投与群の感染効率は両コントロール群の1/3以下まで低下していた。更に抗RON4抗体による肝細胞への感染阻害は抗体濃度依存的であった。以上の結果を踏まえ、RON4はスポロゾイト体外に分泌され、肝細胞への感染に重要な役割を持つことが示唆された。 これらの成果をまとめ、科学雑誌mSphereに投稿、採択された(in printing)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
22年度内に成果をまとめ、論文を投稿したものの、投稿後の追加実験に蚊の唾液腺及び体液内スポロゾイトを用いた実験が含まれており、予想以上の時間がかかったため。加えて追加実験結果投稿後、採択までに時間を要したため。 更にスポロゾイト体外に分泌されたRON4/RON2/RON5の局在を明らかにするための免疫蛍光染色の条件検討に時間を要しているため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究でRON4はスポロゾイトの移動から肝細胞への感染までの間にスポロゾイト体外に分泌されていることを示唆する結果を得た。マラリア原虫の赤血球感染型であるメロゾイトでは、赤血球への侵入時に複合体を形成すると考えられており、スポロゾイト由来のRON2, RON4, RON5も共免疫沈降法にて複合体を形成することを報告している(Nozaki et al, mSphere 2020)。そこでスポロゾイト体外分泌後のRON4の局在に、RON2/RON5が共局在しているかを明らかにするため、IFAによる確認を行う。さらにRON4cKDスポロゾイトでRON2/RON5の局在が変化するかを観察する。 RON4はシグナルペプチドと予想される配列がある以外、機能ドメインは明らかとなっていない。RON2/RON5との結合部位を知るために、C末端側から100アミノ酸ずつ短くした変異型RON4を合成する。これらの変異型RON4とスポロゾイトの溶解物で共免疫沈降を行い、原虫由来のRON2/ RON5がどの長さの変異型RON4まで結合するかを確認して、結合部位を特定する。 さらにRON4cKD原虫の非必須遺伝子座(p230p)に、RON2/ RON5結合部位を欠損させた変異型RON4の発現コンストラクトを導入する。コントロールとして、野生型のRON4を発現させる。作成した変異型RON4発現スポロゾイトの各感染ステップについて、RON2/ RON5の局在がコントロールと異なるのか、IFAで明らかにする。加えて、複合体を形成しないことがスポロゾイトの各感染ステップに与える影響を知るため、変異型RON4発現スポロゾイトが1)唾液腺に侵入できるか、2)運動性の確認、3)肝細胞へ感染できるかを評価する。
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