研究課題/領域番号 |
20K16237
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分49040:寄生虫学関連
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
水島 大貴 自治医科大学, 医学部, 助教 (50843455)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 糖類 / マラリア / ハマダラカ / 中腸細菌叢 / リーシュマニア / サシチョウバエ / 吸血昆虫 / 中腸 / 糖 |
研究開始時の研究の概要 |
吸血昆虫(ベクター)に媒介される病原体の発育・感染性獲得の成否は、病原体とベクター種との組み合わせに規定されると考えられている。しかし、その発育の成否を決定づける因子は未だ明らかでない。本研究では、マラリア原虫ーハマダラカ感染及びリーシュマニア原虫ーサシチョウバエ感染をモデルに、中腸環境を改変する糖類を摂取したベクター中腸の細菌叢及び発現遺伝子を網羅的に解析し、規定因子を特定することを目的とする。本研究の成果は、病原体媒介の謎に迫るだけでなく、糖類を用いた新たなベクターコントロール法の創出に繋がるものと考えている。
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研究実績の概要 |
マラリアやリーシュマニア症は、ヒトに深刻な症状を呈する吸血昆虫媒介感染症である。両病原体が感染可能な吸血昆虫は決まっているが、どのような因子によって規定されているのかは不明である。本研究では、病原体の発育・ヒト感染能力を獲得する上で重要な吸血昆虫の中腸に着目し、生体調節機能を有する糖類を用いて中腸環境を変化させることで感染の成否を決定づける因子を明らかにする。本年度の研究実績の概要は以下の通りである。 1) 抗生物質により簡易的に無菌化したハマダラカ中腸における希少糖D-アロースのマラリア原虫発達阻害効果を検討した。その結果、無菌化の有無に拘らず、同等のマラリア原虫発達阻害効果を発揮することを明らかにした。2)マラリア原虫感染ハマダラカ中腸のキサンチンデヒドロゲナーゼ(XDH)遺伝子はD-アロース摂取によって顕著に発現誘導されることを明らかにしている。そこで、XDH阻害剤であるアロプリノールをD-アロースと同時にマラリア原虫感染ハマダラカに摂取させたところ、中腸におけるマラリア原虫の感染・発達が部分的に復帰した。3) リーシュマニア原虫感染サシチョウバエを効率的に作製するため、リーシュマニア原虫感染マウスを用いて試験した。しかし、吸血したサシチョウバエあたりのリーシュマニア原虫感染率は著しく低いままであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ハマダラカ中腸の無菌化はマラリア原虫感染・発達を促進させることが知られており、マラリア原虫感染は中腸細菌叢と関連していることが示されている。しかし、D-アロースの摂取により無菌化した状態でもマラリア原虫発達阻害効果を発揮した。また、D-アロース摂取によって発現誘導されるXDHがマラリア原虫感染に関与することが明らかになった。これらのことから、D-アロースのマラリア原虫発達阻害効果はハマダラカ中腸細菌叢に非依存的であるとともに、ハマダラカ中腸の代謝・免疫関連因子の制御によるものと考えられた。ハマダラカ中腸におけるマラリア原虫感染・発達に関与する因子を絞ることができたため、順調に進捗している。一方で、サシチョウバエ・リーシュマニア感染モデルにおいては、リーシュマニア感染サシチョウバエの作製が想定外に難航しているため、糖類のスクリーニング等、以降の計画が遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
ハマダラカ・マラリア原虫感染モデルにおいては研究計画通りに進行している。今後は、RNAi法を用いた遺伝子操作により、XDH遺伝子をはじめその他の発現変動遺伝子をノックダウンさせた時のハマダラカ中腸におけるマラリア原虫の感染性を解析する予定である。サシチョウバエ・リーシュマニア感染モデルについては、引き続き、人工吸血法の改善を試みる他、リーシュマニア感染マウスの病変部からの吸血による感染を代替方法も実施していく予定である。
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