研究課題
若手研究
分子標的薬や癌免疫療法により、癌治療は大きな進歩を遂げたが、未だ癌転移を予防する確実な方法は存在しない。申請者はアドレノメデュリン(AM)が、血管、リンパ管の恒常性維持作用を有することを報告してきた。AMの機能は、AM受容体に結合する受容体活性調節タンパク、RAMP2あるいはRAMP3によって制御されている。申請者はRAMP2欠損マウスでは癌転移が亢進するのに対し、RAMP3欠損マウスでは逆に癌転移が抑制されることを見出した。本研究では、AM-RAMP2系またはRAMP3系が、癌転移を抑制もしくは促進させるメカニズムを解明し、選択的に操作することで、癌転移を抑制する新しい治療法に展開する。
我々は、血管作動性ペプチドであるアドレノメデュリン(AM)とその受容体活性調節タンパクRAMP2のノックアウトマウスが血管異常で胎生致死となることを報告してきた。本研究では、誘導型血管内皮細胞特異的RAMP2ノックアウトマウス(DI-E-RAMP2-/-)を用いた。ルイス肺癌細胞を用いた癌転移の検討において、DI-E-RAMP2-/-ではリンパ節転移の亢進が見られた。DI-E-RAMP2-/-では、リンパ節内の高内皮細静脈の構造異常、リンパ節内のT細胞の減少、樹状細胞の分布異常が認められた。以上の結果から、血管恒常性の破綻は、癌細胞のリンパ行性転移亢進につながることが明らかとなった。
アドレノメデュリン(AM)は血管拡張ペプチドとして同定されたが、それ以外にも多彩な作用を有することが知られている。様々な病態において、血中AM濃度が上昇することから、AMの臨床応用が期待されている。しかし、AMの血中半減期は短く、慢性疾患における臨床応用には制限がある。我々はAMの受容体活性調節タンパクであるRAMPの研究を行っている。今までの検討から、AM-RAMP2系は血管発生だけでなく、血管恒常性維持に必須であり、それらの破綻が癌転移を促進させる結果を見出した。現在、RAMPに結合する低分子化合物のスクリーニングを進めており、RAMP2の選択的活性化による癌転移抑制薬の開発が期待される。
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