研究課題/領域番号 |
20K16329
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
村上 翔子 滋賀医科大学, 医学部, 医師(非常勤) (50773975)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | がん代謝 / 舌がん / 3次元培養 / がん代謝解析 |
研究開始時の研究の概要 |
がん細胞の代謝性変化は旺盛な腫瘍成長や形質転換に寄与している。がん代謝は主にin vivoで解析が進められているが、倫理面および経済面から動物モデルの代替となるin vitroの3D培養系の開発が求められている。現在、3D培養系を用いたがん代謝の研究はほとんど報告されておらず、舌がん代謝研究での報告はない。本研究では、生体組織の構造および機能を模倣する3D培養系を用いて、舌がん代謝の解析を行う。特に、代謝の中核を担うミトコンドリア機能解析を行い、舌がん代謝を明らかにすることにより、新たな抗舌がん剤のターゲットとなりうるがん代謝関連酵素を同定し、新規治療戦略の開発を目指す。
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研究実績の概要 |
従来からの2D培養では、細胞は生体とは違った構造や機能を示すことが報告されてきた。一方、3D培養は、経済面や倫理面から動物実験の代替となりうると期待されている。 本研究では、足場として超微細シリカファイバーでできたCellbedを使った新たな3D培養系”tissueoid cell culture system”を用いた。4種類の舌癌細胞株を用いて、従来からの2D培養群(以下、2D)、tissueoid cell culture systemを用いた3D培養群(以下、3D)、舌癌細胞をヌードマウスに異種移植したxenograft群(以下、xenograft)の3群を作成し、網羅的な代謝解析を行った。さらに、がん細胞の増殖、腫瘍生長に必要不可欠なミトコンドリア代謝に注目し、ミトコンドリア機能解析を行った。 代謝解析の主成分解析では、2Dでは3D, xenograftと異なり、ほとんどのプロットが狭い範囲に集まっていた。クラスタリング解析では、2Dは3D, xenograftと比較しほとんどの代謝物のピーク値が著しく低かった。3Dとxenograftではピーク値が高く類似している代謝物が多かった。 ミトコンドリア代謝では、ATP, ADP量は、2Dではすべて有意に低値であったが、3Dとxenograftでは高値であった。細胞外フラックス解析では、進行癌の細胞株(HSC-3, HSC-4)ではOCR(酸素消費速度)は2Dより3Dの方が高値であった。全ての細胞株で3Dでは予備呼吸能が低下していた。 以上より、2Dと3Dでは舌がん代謝は大きく異なっていた。一方、3Dの代謝物の多くはxenograftと類似していた。しかし、xenograftはがん細胞周囲にある宿主由来の間質や血流の影響を受けるため、これらに起因する代謝物が他の群との違いとして現れていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
4種類の舌癌細胞株を用いて従来からの2D培養群、tissueoid cell culture systemを用いた3D培養群、舌癌細胞をヌードマウスに異種移植したxenograft群の3群を作成し網羅的な代謝解析を行うことができた。ウェスタンブロット解析や細胞外フラックス解析を用いてミトコンドリアのエネルギー代謝解析の検討ができた。 しかし、新型コロナウィルス感染拡大による社会情勢を考慮し、当初の計画より遅延している部分もあるため。
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今後の研究の推進方策 |
ウェスタンブロット解析、細胞外flux analysisなどを用いてより詳細ながん細胞ミトコンドリアエネルギー代謝解析を行う。 代謝解析物の中から舌がん特有の代謝変換を発見し、代謝関連酵素に対する小分子化合物を見出し、舌がんの増殖、転移を制御するメカニズム解明につなげていきたい。 今後は、本tissueoid cell culture systemをxenograft系へ近づけるため液性因子や基質などを添加した実験系を確立したいと考える。さらに本システムを利用してin vitroからin vivoへ移る前臨床段階で創薬における薬剤耐性試験の大量スクリーニングへの応用を検討していきたい。
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