研究課題
若手研究
肝癌はいまだ難治性で予後不良な疾患であり、新たな治療戦略が必要である。近年癌の微小環境が治療標的として注目されている。癌関連線維芽細胞(CAF)は間質の主な構成要素で、サイトカイン等を介し癌の増殖、浸潤、転移に関与する。我々はこれまでにConophylline投与によるCAFの活性化抑制と、肝癌細胞の増殖・浸潤抑制を明らかにした。Conophyllineはサイトカイン産生を抑制し、その制御にG protein-coupled receptor 68(GPR68)が関与する可能性がある。本研究ではGPR68に注目してサイトカイン制御およびCAFの抑制機序を解明し、新たな治療戦略を開発する。
肝癌の進展における癌関連線維芽細胞(CAF)の機能に注目し、CAFによるサイトカイン産生の制御に関わるG protein-coupled receptor 68(GPR68)を標的とした新規治療法を開発することを目的とした。肝癌検体からCAFを樹立し解析すると、肝癌CAFのGPR68発現は弱酸性刺激で増加し、CAFの増殖が促進した。またサイトカインIL-6およびIL-8の産生が増加した。GPR68の抑制によりサイトカイン産生が抑制され、肝癌の増殖、浸潤が抑制された。これらの結果から、GPR68によるサイトカイン分泌制御により肝癌CAFの活性が抑制され、肝癌の進展が抑制できる可能性が示された。
肝癌は予後不良で、ウイルス肝炎感染を伴わない肝癌が増加傾向であり、新たな治療戦略が求められている。近年、癌微小環境における癌関連線維芽細胞(CAF)の機能が注目されている。本研究ではCAFがサイトカインを介して肝癌進行に関わることに注目し、サイトカイン制御因子G protein-coupled receptor 68(GPR68)が肝癌進展に与える影響を検討した。GPR68によるサイトカイン分泌制御により肝癌CAFの活性が抑制され、肝癌の進展が抑制できる可能性が示された。今後GPR68は肝癌の新たな治療ターゲットとなり、既存制癌剤併用での治療効果増強等、革新的治療に結びつく可能性がある。
すべて 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Mol Cancer Ther.
巻: Online ahead of print. 号: 6 ページ: 1019-1028
10.1158/1535-7163.mct-20-0150