研究課題/領域番号 |
20K16365
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分50010:腫瘍生物学関連
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
鈴木 智貴 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (80834001)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | びまん性大細胞型B細胞リンパ腫 / 中枢神経再発 / 次世代シーケンサー / genetic subgroup / cell free DNA / NGS |
研究開始時の研究の概要 |
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL) 患者の中枢神経(CNS)再発のリスク因子は十分確立されていない。 DLBCLは遺伝子異常のタイプによりサブグループ化可能なことから、特定の遺伝子変異がCNS再発のリスクとなる可能性を推測した。 CNS再発を呈したDLBCL患者の初発時の血清由来のcell free DNA(cfDNA)および腫瘍由来DNAを用いてターゲットシーケンス等により遺伝子変異を検出し、非CNS再発患者のcfDNA由来の遺伝子変異タイプと統計学的に比較する。 これらの解析により、cfDNAを用いた、革新的かつより侵襲の少ないCNS再発リスクの評価方法確立を目指す。
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研究実績の概要 |
本研究はびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)患者の重要な予後不良イベントである中枢神経(CNS)再発を予測するための精度の高い因子を検討するものである。CNS再発リスク因子として特定の遺伝子異常の関与および、「骨髄中に腫瘍由来の遺伝子異常が検出されること(病理学的に骨髄への腫瘍浸潤を認めない症例においても)」を考慮している。 多施設よりCNS再発したDLBCL患者が合計で47人登録され、国内では最大級のCNS再発DLBCL患者のコホートであると考えられる。47人の臨床病理学的な特徴についての評価を行い、CNS再発後の全生存期間の中央値は16カ月であった。また、予後に影響を与えた臨床的な因子 (performance status不良、70歳以上、リツキシマブの不使用)を見出し、2022年の日本血液学会総会で口演発表した。 一方で、登録患者 (47人中26人) から収集した腫瘍組織のホルマリン固定検体(FFPE) よりgenomic DNA (gDNA) を抽出し、全エクソンシーケンス解析を実施した。その結果、MCDあるいはC5と呼ばれるgenetic subgroupの特徴を有する腫瘍の頻度が、一般的なDLBCL患者集団におけるMCD (C5) の頻度よりも高いことが判明し、2023年の米国血液学会にてポスター発表した。 また、CNS再発DLBCLにおいて、一般的なDLBCLと比較して変異の頻度が高く認められる遺伝子を見出し、その意義について検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
FFPEから抽出したgDNAを用いて遺伝子異解析を行ったため、gDNAの質が低いサンプルが存在した。これらにおいても信頼性の高い結果を得るために追加のシーケンスを行ったため時間を要した。腫瘍由来のgDNAを用いて行った全エクソンシーケンスの結果を参考として、各患者の骨髄由来 (腫瘍浸潤の有無に依らず) のgenetic DNAを用いた標的シーケンスを行う予定であったが、予算の不足のために本研究課題での実施が難しいと判断した。しかし、"今後の研究の推進方策"で後述するように、今回の検討で見出したMCDタイプの最も重要な特徴であるMYD88とCD79Bの変異の有無に着目し、より多数例のコホートでこれらの遺伝子変異が中枢神経再発に与える意義について検討を進める
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題で、国内最大級のCNS再発DLBCL患者の臨床情報が得られたが、症例数が少なく、統計学的な検討まで実施することが十分できなかった。そのため、CNS再発DLBCL患者の予後や至適治療を探索的に評価する多施設前向き観察研究を実施する予定である。難治性リンパ腫小班(代表者 三重大学の山口素子先生)にて参加を呼びかけたところ、約50施設が参加予定であり、準備を進めている。この研究により、CNS再発DLBCLの至適治療の探索および、将来的な同対象に対する治療開発のためのヒストリカルコントロールとして活用することを予定する。 また、CNS再発のリスク因子として、MCDタイプのgenetic subgroupが特定された。MCDタイプはMYD88とCD79B遺伝子の変異が特徴的であった。名古屋市立大学で診断されたDLBCL患者(約300人)において、MYD88とCD79Bのhot spot変異が無再発生存期間や全生存期間に与える影響を評価した研究が本研究とは別に実施されていた。そのコホートを用いて、MYD88 and/or CD79Bの変異がある場合の中枢神経再発リスクを評価するコホート研究を実施する。本研究課題で実施したWESの結果とも融合可能である。 さらにMYD88 and/or CD79Bの変異があり、CNS再発した患者と、MYD88 and/or CD79B変異があったもののCNS再発しなかった患者の臨床病理学的な特徴についても詳細を検討する予定である。
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