研究課題
若手研究
肺癌に対する有望ながんワクチンの開発に向けて、腫瘍内のT細胞とそれらが認識するがん抗原に関する新しい知見を得ることが本研究の目的である。腫瘍浸潤リンパ球(TIL)中にCD103+CD39+CD8+T細胞を検出し、その頻度と患者の腫瘍免疫環境、臨床的特徴、治療効果や予後との相関を検討する。個々の患者で発現するがん抗原を遺伝子変異由来のネオ抗原のみならず、がん・精巣(CT)抗原も含めて同定し、腫瘍反応性T細胞が抗原を認識し反応するか検討する。
本研究では肺癌検体3例から新鮮分離がん細胞を採取し、そこからCD8+T細胞を分離しSingle cell解析を用いてT細胞のRNA発現とT細胞受容体(TCR)遺伝子を解析した。一方で同3例の腫瘍細胞からDNA・RNAを抽出し、AIを用いてがん抗原を予測した。双方の情報を合わせることで、腫瘍特異的なT細胞集団とがん抗原を同定した。ENTPD1(CD39),PDCD1(PD1),HAVCR2(TIM3)といった疲弊化マーカーを発現したT細胞集団のTCR 49種が検証され、9種ががん抗原との反応を示し、腫瘍特異的な反応を示す集団であると推定された。がん抗原は7種で反応が確認された。
肺癌に対する個別化がんワクチン開発の際に、腫瘍反応性CD8+T細胞が認識するがん抗原に優先順位がつけることができれば、より効果的なワクチン療法を提案できる可能性がある。がん抗原の候補として遺伝子変異由来のネオ抗原とがん・精巣抗原(KK-LC-1)を含めて検討しており、TCRとがん抗原のペアで反応性を検証できたことで、抗原ごとの反応性の違いを検証することができた。これはがん抗原の順位づけの一助となる可能性があり、将来の肺癌に対するがんワクチンを開発する上で重要な情報となる。
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