研究課題/領域番号 |
20K16473
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分51020:認知脳科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石川 理絵 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (80776013)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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研究課題ステータス |
完了 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | PTSD / 社会的敗北ストレス / 記憶エングラム / 恐怖記憶 / 社会忌避記憶 / 海馬 / 慢性的不安症状 / 記憶痕跡細胞 / 不安様行動 |
研究開始時の研究の概要 |
PTSDは恐怖記憶を原因とする精神疾患であり、トラウマ記憶のフラッシュバックや不安・うつなどの精神障害を発症する。しかし、これまで多く研究されてきたPTSDマウスモデルはトラウマ記憶形成と不安障害を分けて解析されており、複合的な症状を発症するヒトのPTSD症状に対応できていなかった。本研究では社会的敗北ストレス処置を新規PTSDモデルとし、社会性の忌避(トラウマ)記憶と不安障害の関係性の解明を目的とする。トラウマ記憶の形成且つ不安症状を誘発する社会的敗北ストレス処置を使用し、社会性忌避記憶と不安様症状の関係性を解析する。この研究により、PTSDの新規治療法開発に結び付くことが期待される。
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研究成果の概要 |
本研究において、社会的敗北ストレス処置の初日に活性化する海馬ニューロンが、社会忌避記憶痕跡細胞(エングラム)として機能することが示唆された。さらに、社会的敗北ストレスを慢性的に与えた後に観察される不安症状が、この社会忌避記憶エングラム活性の抑制によって改善されることが示され、社会忌避記憶エングラムと不安様症状の関連性が示唆された。また、この社会忌避記憶形成には恐怖条件付け記憶と同様に新規遺伝子発現が必要であることも示され、社会忌避記憶の性状解析が進んだ。
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
本研究によって、新規PTSDモデルとしての社会的敗北ストレス処置誘導性トラウマ記憶の理解が進んだ。これまでPTSDモデルとして広く用いられた古典的恐怖条件付けと比較して、社会的敗北ストレス処置では恐怖記憶に伴う精神異常が観察される点が異なる。本研究から、社会的敗北ストレス処置によって、恐怖条件付けと同じく新規遺伝子発現依存的に恐怖記憶が形成されることが示され、さらに慢性ストレスによる精神異常がこの恐怖記憶痕跡細胞と関連する可能性を示した。以上から、PTSDモデルとしての社会的敗北ストレス処置の有用性が示された。本処置を用いることでPTSDの新規治療法開発が進むことを期待する。
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