研究課題/領域番号 |
20K16477
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分51020:認知脳科学関連
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研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
飯島 和樹 玉川大学, 脳科学研究所, 研究員 (60743680)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 拡張された心 / 実験哲学 / 哲学 / 認知科学 / fMRI / 第三者罰 / 自由意志 / 社会脳 / 協力 / 垂直罰 |
研究開始時の研究の概要 |
懲罰は社会秩序を支える重要な基盤である.近年,直接利害のない第三者から利己的な行為者に対して与えられる「第三者罰」が協力行動の維持に重要であることが示されている.本研究では,第三者罰の中でも,集団メンバーから与えられる「水平罰」ではなく,権威者から下される「垂直罰」こそが,集団内の懲罰量の一貫性の源を与え,協力行動を促進し,さらには安定した社会秩序の基盤となるとする応募者自らの仮説(「垂直罰仮説」)を検証し,社会秩序形成の起源とその神経基盤を解明する.本研究は,近代社会についての根源的な理解をもたらすとともに,制度設計や紛争への介入法にまで至る広範な波及効果を持つと期待できる.
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研究実績の概要 |
前年度から引き続き,新型コロナウィルス感染症の拡大が続いたため,対面での集団実験は実施不可能となった.そこでオンラインで実行可能な実験案を進めることとし,心が脳の物理的境界を越えて環境へと拡張しうるという主張である「拡張された心」仮説 (The Extended Mind Hypothesis: EMH) の実験的検証を行った.Clark and Chalmers (1998) によれば,何が行為者の認知過程の構成要素とみなされるかは,皮膚や頭蓋骨の境界によって決定されるのではなく,行為者が従事している実践に対してそれが関与する仕方(つまりは機能)によって決定される.このように素朴心理学的な機能主義,いわば「常識機能主義」が重大な論証上の役割を担っているにも関わらず,常識機能主義に関する解明はほとんど行われてこなかった. そこで,Clark and Chalmers (1998) のものに類似したシナリオを用いて,EMH に関する実験哲学的な調査を行った.ブラウザ上で回答可能な質問紙を作成し,数回の予備実験を重ねて内容を精緻化した後に,本実験を実施し,約 600 名からデータを取得した. 調査の結果として,人々は,認知を補助する器具が担う情報は,行為者の記憶・信念・知識とみなせると判断する傾向にあった.すなわち,デバイスにまで記憶・信念・知識が拡張すると人々はみなす傾向にあるようである.この結果は,少なくともいくつかの心的状態に関して常識機能主義が人間心理として存在することを初めての実験的に支持するものである.この結果は応用哲学会年次研究大会で発表された.この内容は現在,論文としてまとめ投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の実験計画案については,感染症の状況により推進が不可能となったが,その代替案としてオンラインで実施可能な実験計画を二本進めることができ,論文投稿にまで到達することができた.第三者罰に関わる集団実験も予算繰越を行った上でオンラインでの展開を予定している.
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今後の研究の推進方策 |
オンライン実験に関する論文 2 報の出版を目指す.また,最終年度の予算の繰越を行ったため,これまでに培ったオンライン実験のノウハウを活かして,当初の予定だった第三者罰に関する集団実験をオンラインで実行するプログラムの完成を目指す.
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