研究課題/領域番号 |
20K16488
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分51030:病態神経科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
祖父江 顕 名古屋大学, 環境医学研究所, 特任助教 (80823343)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | アルツハイマー病 / ミクログリア / 神経炎症 / グリア細胞 / ADモデルマウス |
研究開始時の研究の概要 |
本研究はアルツハイマー病(Alzheimer’s disease; AD)の中核病理の1つであるアミロイドβのクリアランスや神経炎症の調節に寄与し、AD病態に関わるミクログリアというグリア細胞の一種に着目して、神経細胞を取り巻く環境からAD病因・病態関連シグナルを明らかにしていくことを目的としている。AD患者脳およびADマウスから単離したミクログリアの遺伝子発現変化を比較し、疾患ミクログリアにおける炎症関連遺伝子プロファイルの作製および新規治療ターゲットを絞り込み、細胞レベル・動物レベルで炎症発現変化とその制御を解析していく研究である。
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研究実績の概要 |
認知症の主要な原因疾患であるアルツハイマー病(Alzheimer’s disease; AD)の中核となる病理は、アミロイドβ(Aβ)・タウ蛋白の異常蓄積であり、これらは神経変性につながる主要因子である。本疾患における現行の治療薬はこれらの因子の制御ではなく対症療法の域に留まっている。従って、本疾患の病因と病態関連シグナルを明らかにし、病態に即した革新的治療法を開拓するための基盤整備が必要である。AD脳の老人斑に集簇するグリア細胞の一種であるミクログリアは、Aβクリアランスや神経炎症に寄与し、ADの病態に関与することが注目されている。このような背景から、本研究ではi)軽度AD病理脳、各種ADマウスのグリア細胞における共通遺伝子発現プロファイルの作成と解析およびii)軽度AD病理脳およびADマウスのグリア細胞にて共通して変動した因子であるカンナビノイド受容体II型(CB2)を介した炎症反応調節機構とAβクリアランスへの影響について解析を行う。
今年度は下記について実施した。 i)においてはヒト軽度AD病理脳、APP knock-in(App-KI;アミロイド病理を呈する)、rTg4510(タウ病理および神経細胞死を呈する)マウスのミクログリアにおいて遺伝子発現比較解析からHBEGFが同定し、HBEGFタンパクを活性型培養アストロサイトへ添加した際に抗炎症作用を示した。ii)においてはApp-KIマウスに対してCB2の作動薬であるJWH133を連続飲水投与を行い、バーンズ迷路試験を実施した際に空間記憶の改善を確認した。さらに、組織学的解析ではJWH133を投与したApp-KIマウス脳において、神経変性突起の有意な減少を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「CB2を介した炎症反応調節機構とAβクリアランスへの影響」においてはJWH133の空間記憶への有効性を行動解析により明らかにし、この認知機能の改善機序の一端を組織免疫染色法により明らかにできた。一方で「AD病理脳、各種ADマウスのグリア細胞における共通遺伝子発現プロファイルの作成と解析」については、培養アストロサイトを用いた実験においてHBEGFの抗炎症作用が確認できたが、動物の繁殖に遅延が生じ、行動解析および神経病理学的解析まで到達できなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は「AD病理脳、各種ADマウスのグリア細胞における共通遺伝子発現プロファイルの作成と解析」については遺伝子比較解析により同定されたHbegfをはじめとする治療候補分子による神経炎症調節や認知機能への影響をApp-KIマウスを用いて解析し、新たなAD治療標的としての妥当性を明らかにする予定である。また、「CB2を介した炎症反応調節機構とAβクリアランスへの影響」についてはこれまでのデータを取りまとめて国際誌へ投稿する予定である。
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