研究課題
若手研究
カルシウムイオンは、神経回路形成や神経可塑性など多様な細胞イベントを制御する。近年、カルシウムシグナリング破綻と精神障害との関係が注目されるが、両者の因果関係については多くが未解明である。我々はこれまでに、自閉スペクトラム症(ASD)患者から同定された変異型のL型カルシウムチャネルを発現するマウス系統を作出した。本研究では、同モデルマウスを用いることで、カルシウムシグナリング破綻とASD病態との関係を検討する。また更に、同マウス系統への介入操作によるASD病態の回復を検討する。すなわち本計画では、カルシウムシグナリング破綻に着目したASD病態の解明および治療法の探索を目的とする。
本研究課題は、自閉スペクトラム症の背景にある神経回路病態を解明し、具体化した標的に対する効果的な治療開発の推進を目的としている。研究成果として、①自閉スペクトラム症患者より同定された、変異型のL型カルシウムチャネルを発現するマウス系統が自閉スペクトラム症様の行動異常を示し、②同マウス系統が神経回路形成および細胞内カルシウム動態の異常を示すことを明らかにした。またさらに、③同マウス系統の変異型L型カルシウムチャネルを標的とした治療的介入手法の開発について、予備的検討を完了した。本研究課題により得られた学術的知見・実験手技は、自閉スペクトラム症の治療開発における新たな基盤となることが期待される。
自閉スペクトラム症は生後初期からその症状が認められ、胎生・発達期にかけた神経回路形成の破綻が発症原因の一つと考えられている。しかしその一方で、神経回路の形成過程や出来上がった神経回路の機能にどのような異常があるのかという「神経回路病態」について多くが未解明であり、病態理解を基礎とした合理的な治療法の開発が困難な状況にあった。本研究課題により得られた研究成果は、こうした自閉スペクトラム症の背景にある神経回路病態の一端を明らかにするものであり、並行して開発を進める治療的介入法とあわせて、自閉スペクトラム症の治療開発へ寄与することが強く期待できる。
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