研究課題
若手研究
ヒトの脳皮質局所で観察される20 Hz未満の脳波リズムは、視床などの深部核の影響下にあり、局所の興奮性を変容させていると考えられる。しかし、その生理的機序の詳細や、てんかん性活動の抑制への応用可能性については未解明である。本研究では、ヒト脳内電極からの記録を用いて皮質・深部核連関の脳波リズム生成機序を理解し、それに基づいててんかん焦点の脳波リズムを患者自身が制御することでてんかん性活動の抑制を試みる治療法の開発を目指す。
(研究成果の具体的内容)①深部核上電極を含む頭蓋内電極を用い脳波リズム有向ネットワーク解析:2020年度に,脳外科的手術で臨床的必要性から皮質・白質切除に至り,脳室が解放され脳室内電極が留置された症例において,解析に耐えうるデータ記録法と電極位置の同定法を確立した.本年度は研究施設での倫理委員会審査承認のもと,5例程度の症例で,その手法に基づき,安静時の脳室内視床上電極と硬膜下電極での脳波記録,皮質・視床上それぞれの電極からの単発電気刺激による誘発活動記録,および対側正中神経刺激による頭蓋内電極による感覚誘発電位の記録を継続して行いえた.また,それらのデータの解析プログラムを作成し,電気生理学的特徴を調べることを開始した.さらに,国内の神経生理学に関する学会で,本研究に言及しつつ意識に関する教育的講演を行うとともに総説の執筆を行った.②脳波リズムの自発的制御によるてんかん性活動・発作抑制:手指運動や足の運動に関わる対側運動関連脳電位(MRCP)を記録された硬膜下電極留置1症例のデータ解析により,運動中前後1秒でてんかん発作起始部でのてんかん性放電が減少する可能性を見出した.また,硬膜下電極留置中に文章を読む課題とMRCP時のてんかん性放電の数を比較する前向きのデータ取得を開始した.(意義・重要性)上記の二つの研究課題ともに科学的結論を出すには未だ不十分であるが今後の解析,研究発展につなげられる方法論・データの蓄積ができた.また,学会発表,総説執筆により脳神経に関わる医療者,研究者へ向けて本研究分野への興味の喚起を行えたと考える.
2: おおむね順調に進展している
・COVID-19に対する国内の各種規制の影響で遅れていた研究の遅れは取り戻しつつあるが,手術時でない硬膜下電極侵襲的データ記録は症例数の減少で前向きのデータ取得は進んでいない.
・研究実績概要における①についてはデータ取得と解析を同時進行で行い,他のspecialtyを持つ研究者と共同でデータ解析を行う礎ができるよう,各種学会での研究発表と討議を検討する.・②においては過去の後ろ向き症例でのデータ解析に注力する.
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (79件) (うち国際学会 13件、 招待講演 3件) 図書 (1件)
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