研究課題
若手研究
脳心血管障害の一次予防や、心疾患の二次予防としての心臓リハビリテーション、さらに集中治療領域など、血中乳酸濃度の測定は日常臨床において有益であるがそれをモニタリングする方法はない。申請者は乳酸測定ウェアラブルデバイスを用いた先行研究で健常者において運動中の血中乳酸上昇タイミングが判定できることを報告した。しかし、汗をかきにくい心疾患患者では判定が困難であることが課題である。本研究では新たにマイクロ流路回路を応用した微量汗回収装置を用いてこの課題を解決し、簡便・非侵襲的かつ持続的な血中乳酸濃度モニタリング方法を確立することを目的とする。
2020年度は乳酸測定ウェアラブルデバイスの改良を行った。新たなデバイスが運動中に適切な有酸素運動の運動強度を提供できるシステムか否かを検証するために、心肺運動負荷検査による呼気ガス分析、運動中の乳酸値の測定などを用いて、乳酸測定ウェアラブルデバイスによる有酸素運動限界の通知の妥当性を評価した。被験者に本デバイスを装着したうえで、心肺運動負荷検査及び血中乳酸値測定を行った結果、本デバイスによる乳酸値の上昇による嫌気性代謝閾値の通知タイミングは、運動中の呼気ガス分析により決定される嫌気性代謝閾値のタイミングと良好な相関を有することが確認された。また、血中乳酸値とも良好な相関が得られることが示唆された。引き続き心血管疾患を有する患者を対象に検証した結果、同様に本デバイスによる乳酸値の上昇による嫌気性代謝閾値の通知タイミングは、運動中の呼気ガス分析により決定される嫌気性代謝閾値のタイミングと良好な相関を有することが確認された。2021年度は、さらに発汗量が少ない場合における検討を行った。前提として、発汗が少ない場合においても汗中乳酸の濃度に変化があるかどうかについては過去に全く報告がないため、この点について検討を行った。しかし、微量な発汗ではうまくモニタリングができないため、マイクロ流路回路の改良を行った。2022年度には流路回路の改良の結果、微量な発汗での測定が可能となってきており、データーの蓄積を行った。COVID19感染症の鎮静化を待ち、2022年度から2023年度にかけて、心肺運動負荷試験中のみでなく、日常の心リハにおける運動療法中の汗中乳酸モニタリングを行い、特に、心肺運動負荷試験が禁忌であり、嫌気性代謝閾値が不明な患者においても安全に運動療法を行うためのモニタリングに応用できる可能性を示し、これらを学会発表した。
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Sci Rep.
巻: 2 号: 1 ページ: 4929-4929
10.1038/s41598-021-84381-9