研究課題/領域番号 |
20K16530
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52010:内科学一般関連
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研究機関 | 山陽小野田市立山口東京理科大学 |
研究代表者 |
高田 誠 山陽小野田市立山口東京理科大学, 薬学部, 助教 (60551348)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2021年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2020年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | トシリズマブ / 抗体医薬品 / 選択的沈殿法 / HPLC / 自然蛍光検出 / COVID-19 / 蛍光検出 / FRET / 薬物相互作用解明 / サイトカインストーム |
研究開始時の研究の概要 |
市販の蛍光試薬を用いて、トシリズマブ(TCZ)由来の自然蛍光と蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を起こす蛍光試薬をスクリーニングするとともに、各濃度並びに条件の最適化を行う。続いて、TCZとサブクラスであるIgG1の前処理を行い、HPLCによる分離条件の検討を行う。その後、最適化した条件を用いて市販のヒト血清へと適用し、本法の実用性を評価する。最後に、病院との共同研究により、実際の関節リウマチ治療患者の血液を対象としてTCZ濃度の定量を行う。また、メトトレキサートやNSAIDs併用時における各医薬品の血中濃度の推移と奏功率や有害事象について取りまとめを行う。
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研究実績の概要 |
モノクローナル抗体を主成分とした抗体医薬品は世界的に高い売り上げ医薬品であり、バイオシミラーも次々に開発され、今後も臨床現場における利用が増えると予想される。それに伴い、抗体医薬品の薬理効果の確認を目的とした血中薬物濃度測定についても必要性が高まっている。現在、抗体医薬品の測定には選択性の高いELISAなどの酵素免疫測定法や酵素消化を伴うLC-MS/MS法が用いられている。しかしこれらの方法は、前処理操作が煩雑で分析完了までに時間がかかるといった問題点を有している。これらの理由から、直接血中濃度を測定することはほとんど行われていない。そこで私は、抗原-抗体反応を用いない物理化学的手法によりヒト化抗体医薬品であるトシリズマブ(TCZ)とサブクラスのIgG1を分離する前処理法の開発を進めてきた。その結果、塩基性試薬を含むアセトニトリル溶液とトリフルオロ酢酸水溶液を組み合わせることでIgG1を選択的に除去し TCZ を回収できる画期的な選択的沈殿法を見出した。さらに、ヒト血清中の TCZ を選択的沈殿法による前処理後に HPLC を用いてTCZの自然蛍光を検出することで極めて迅速かつ簡便に定量する分析法を開発した。TCZは関節リウマチなどの慢性疾患の治療のみならず、近年ではCOVID-19によるサイトカインストームの治療にも適用が拡大され、急性期治療時の効果確認の必要性が増加している。本法は慢性疾患の治療効果を確認するための感度としては不十分であったものの、これまで報告されているいずれの分析法と比較しても迅速性の面で極めて優れていることから、緊急性の高い場面における治療効果確認においては有用な手法となる。また、選択的沈殿法は物理化学的な前処理法であることから、ELISAのように抗体医薬品ごとに前処理を変更する必要性がなく、汎用性の面でも優れた手法である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度は、ヒト血清中のTCZを選択的沈殿法による前処理後にHPLC自然蛍光検出することで極めて迅速かつ簡便に定量する分析法を開発し、学会発表 [〇高田誠 他, 第33回クロマトグラフィー科学会議 (2023)] および論文投稿 [Takada M., et. al., Chem. Pharm. Bull., 71, 19-23 (2023).] を行った。選択的沈殿法は抗原-抗体反応を利用しない前処理法であり、アルキルアミンを含むアセトニトリル溶液とトリフルオロ酢酸(TFA)水溶液による迅速かつ簡便な前処理により、血清中に多量に含まれるIgG1を凝集・沈殿させ、微量のTCZを回収することが可能であった。感度の面では関節リウマチ治療における治療域には不十分だったものの、COVID-19のサイトカインストーム時の治療における血中濃度を測定することが可能な結果が得られた。本法は慢性疾患の治療効果を確認するための感度としては不十分であったものの、これまで報告されているいずれの分析法と比較しても迅速性の面で極めて優れていることから、緊急性の高い場面における治療効果確認においては有用な手法となる。また、選択的沈殿法は物理化学的な前処理法であることから、ELISA のように抗体医薬品ごとに前処理を変更する必要性がなく、汎用性の面でも優れた手法であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度開発した選択的沈殿法によるヒト血清中トシリズマブの自然蛍光検出によるHPLC定量法は、極めて迅速かつ簡便な方法であった。また、選択的沈殿法はヒト化抗体であるTCZへの適用が可能であったことから、マウス由来のアミノ酸比率の異なるキメラ型抗体やヒト型抗体に対しても有用であることが期待される。一方で、バイオシミラーは先発抗体医薬品との比較において品質、安全性、および有効性については「同等性/同質性」が求められているものの、分子量が大きいため品質特性については同等でない可能性がある。これらの製剤の品質管理や生体中医薬品分析は極めて有用であることから、同じIgG1サブクラスでありキメラ型抗体医薬品のインフリキシマブへと本法を適用する。まず、先発品をモデル医薬品として使用し、選択的沈殿法に用いるオクチルアミンやTFAの濃度ならびにHPLC分離条件の最適化を行う。最適化した前処理条件及びHPLC分離条件を用いてIFX投与患者血液試料へと適用し、本法の実用性を評価する。更に、現在5社から販売されているIFXバイオシミラーについて検討を行い、本法のバイオシミラーに対する応用性についても確認する。
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