研究課題
若手研究
大脳白質病変や脳微小出血といった脳小血管病を有する患者は、その重症度が認知症発症、脳卒中発症、脳卒中後の予後不良に関連する。本研究では脳小血管病を有する患者において、アルツハイマー型認知症の診断に有効と示唆されている血液バイオマーカー、マイクロRNAが放射線画像的指標、生理学的検査指標、他の血液検査指標にどのように影響をあたえるか、認知症発症や脳卒中発症にどのように関連するかを検討する。さらにニューラルネットワーク解析を用いて、これらを予測する指標を見出し、最適な予測モデルの確立を目指していく。
脳小血管病の病態を反映する血液バイオマーカー(α2マクログロブリンやALPなど)、生理検査指標、口腔内環境の影響について本研究ではこれまで検討してきた。最終年度は、血清保存を行ってきた外来通院の患者82例(アルツハイマー型認知症33例、軽度認知障害20例、血管性認知症23例、その他6例)(平均74.5歳)の臨床的特徴をまとめた。MMSEの中央値25(4分位 21.3-28)、PVH、DSWMHの中央値は1であり、脳微小出血は18例(22.0%)に認めた。認知症病型別、白質病変重症度別に応じたマイクロRNAの網羅的探索をこころみたが有意な結果は得られず、「脳小血管病と自律神経指標の関連」を行い、多面的に脳小血管病の病態をアプローチする方針とした。脳小血管病のひとつである白質病変の最大のリスク因子は年齢と高血圧であるが、血圧変動などの自律神経障害との関連も示唆されている。頸部超音波検査で評価しえる迷走神経サイズは自律神経障害がある症例はサイズが小さいことが示唆されているが、迷走神経サイズと白質病変の関連は明らかでなかった。心血管リスク因子を有する196例を対象に迷走神経サイズと白質病変との関連を調査すると、左右どちらの迷走神経サイズも白質病変の重症度と負に相関し、年齢や高血圧症などの因子で調整後も独立して関連した。研究全体を通してマイクロRNAの検討に関しては有意義な結果は得られなかったが、2023年末から髄液Aβの測定が保険収載され臨床に応用されるようになっている。今後は髄液Aβ40/42に関連する血清マイクロRNAを同定することを軸とし、今回保存した血清、対象症例をvaridationに用いるなど今後の研究を展開していきたい。
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すべて 雑誌論文 (15件) (うち査読あり 15件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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