研究課題
若手研究
統合失調症などの精神疾患を持つ当事者の回復において、臨床家の視点から定義された病気や症状の回復を目指す「臨床的リカバリー」と、当事者の視点から自分らしい人生の回復を目指す「パーソナルリカバリー」の2つが重要である。両者には中程度の相関があるもので、どちらも治療戦略を検討する上で必要なものであるが、これまでの研究では、臨床的リカバリーの重みが大きく、当事者のニーズと実際の研究が解離していたと考えられる。そのため、本研究では統合失調症を持つ当事者の客観的・主観的回復過程を縦断的に検討し、当事者と協働して研究を進める「共同創造」を通じて、当事者とも共有可能な結果の可視化を目指す。
本研究では、デイケアに通所する統合失調症などの精神疾患をもつ当事者との協働を通して、回復の定義を考え直し、回復過程を可視化することを目指す。本年度はデータの集積を引き続き実施し、デイケア内で有志の当事者と医療者が研究について話し合う共同創造のための検討会(深堀りDH)を月に2-3回開催した。検討会では、昨年度に引き続きデイケア内の過去の研究の紹介や、臨床の背景にある考え方など、基本的な前提について繰返し共有しながら議論した。本作業が共同創造において重要と考えられた。患者・市民参画を推進するための研究の知識に関する英文資料の翻訳を継続した。デイケア利用による「回復」を可視化するため、引き続き質問紙や心理尺度を用いた検査を実施した。2022年度は11名が参加し (WAIS-IV:7件、BACS-J:7件、UPSA-B:7件、JART25:5件)、データ収集を行った。また、専門家が臨床で用いている「生活臨床」の考え方を、自記式の共有可能なものとする尺度(共同創造型―生活・人生態度尺度)の開発を進めた。オンライン調査と実地調査で315名が検査に参加した。予備解析では再検査信頼性と内的一貫性は概ね保たれているものの、構造的妥当性は乏しかった。本研究の発表内容については、デイケアを利用している当事者と専門家が検討会で共有し、学会発表の前に意見収集と修正を行った。デイケア内での共同創造の試みについて学会での発表を行った。
3: やや遅れている
共同創造のための検討会は2021年度から引き続き実施した。しかし、データ収集については、新型コロナウイルス感染症の影響は依然続いており、データ数は少ない。2023年度まで研究計画を延長し、データ収集と解析を進める。
共同創造のための検討会を引き続き開催し、当事者と専門家の前提共有を繰返しながら研究を遂行する。引き続き縦断のデータ収集と解析を実施する。共同創造型―生活・人生態度尺度の開発を完了し、論文化する。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 備考 (2件)
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http://todai-dh.umin.jp/medical.html#research