研究実績の概要 |
統合失調症患者と対照者のペア20組の死後脳それぞれの背外側前頭前野(DLPFC)および一次視覚野(V1)の灰白質から2021年度に抽出したRNAを用いた。症例の各領域から得られたRNAサンプルを用いて、すでに発現定量したFEZF2およびSATB2に加えTBR1およびFOXP2のmRNAの発現を定量した結果、TBR1はDLPFCにおいて1.6%、V1では20%増加していることが判明した。疾患、性別を固定効果、年齢、保存期間、皮質サンプルのpH、RNA integrity number(RIN)を共変数とした共分散分析の結果、疾患の影響はDLPFC(F1,33=0.02, P=0.89)、V1 (F1,33=0.29, P=0.60)ともに有意性は検出されなかった。また共分散分析における性別、年齢、保存期間、皮質サンプルのpH、RINの影響を調べたところ、DLPFCでは性別(F1,33=4.3, P=0.046)およびRIN(F1,33=13.7, P=0.001)、V1ではRIN(F1,33=68.5, P<0.001)の有意な影響が検出された。また、統合失調症のDLPFC、V1それぞれにおいてTBR1の発現に対する死亡時の抗精神病薬、抗うつ薬、ベンゾジアゼピンおよび抗てんかん薬の使用や死因としての自殺の有意な影響は認められなかった。一方、FOXP2は、DLPFCにおいて5.2%、V1では38%増加していることが判明した。FOXP2に関しては現在統計解析を行っている。
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