研究実績の概要 |
統合失調症患者と対照者のペア20組の死後脳それぞれの背外側前頭前野(DLPFC)および一次視覚野(V1)の灰白質から抽出したRNAを用いて発現定量したFOXP2の統計解析を行った。FOXP2は、DLPFCにおいて5.2%、V1では38%増加しており、疾患、性別を固定効果、年齢、保存期間、皮質サンプルのpH、RNA integrity number(RIN)を共変数とした共分散分析の結果、疾患の影響はDLPFC(F1,33=0.56, P=0.46)、V1 (F1,33=0.06, P=0.81)ともに有意性は検出されなかった。また共分散分析における性別、年齢、保存期間、皮質サンプルのpH、RINの影響を調べたところ、DLPFCでは年齢(F1,33=6.2, P=0.018)およびRIN(F1,33=5.8, P=0.022)、V1ではRIN(F1,33=74.3, P<0.001)の有意な影響が検出された。また、統合失調症のDLPFC、V1それぞれにおいてFOXP2の発現に対する死亡時の抗精神病薬(DLPFC: t=0.9, corrected P=1.00, V1: t=0.7, corrected P=1.00)、抗うつ薬(DLPFC: t=1.2, corrected P=0.98, V1: t=2.0, corrected P=0.22)、ベンゾジアゼピンおよび抗てんかん薬(DLPFC t=0.9, corrected P=1.00, V1: t=2.3, corrected P=1.00)の使用や死因としての自殺(DLPFC t=0.2, corrected P=0.85, V1: t=0.2, corrected P=0.87)の有意な影響は認められなかった。
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