研究課題
若手研究
申請者はこれまでに、ストレス誘発性不安障害では海馬bone morphogenetic protein (BMP)4シグナル経路が活性化していることを明らかにした。不安障害にはグリア由来の炎症および海馬神経新生の減少が関与しているが、BMP4がこれらの細胞に与える影響は不明である。そこで本研究は、ストレスによる海馬BMP4シグナル経路をトリガーとした神経―グリア細胞連関メカニズムに着目したストレス誘発性不安障害の病態メカニズム解明を行う。
本研究では「ストレス誘発性海馬BMP4シグナル経路の活性化が、精神疾患の一つである不安障害の発症メカニズムに関与するのか?」をテーマとして設定した。結果として、ストレス誘発性不安モデルラットでは、感情制御にかかわる海馬においてBMP4シグナル活性の亢進、および海馬神経数の減少が認められた。次に、不安モデルラットの海馬において、炎症マーカーであるリン酸化p38-MAPKP3の発現が増加していた。脳内炎症は不安障害を含む精神疾患のリスク因子である。また、BMP4は炎症惹起因子としての機能をもつことも知られていることから、不安障害の発症には海馬BMP4シグナル活性化が関与する可能性が示された。
不安障害は精神疾患の中でも罹患率が高く、その発症要因は人間関係間で生じる心理社会的ストレスである。しかし、不安障害の病態メカニズムについては未解明な部分が多いため、既存の不安治療薬の効果は不十分である。そのため、より有効性の高い不安治療薬が望まれている。本研究結果により、海馬BMP4シグナル活性化がストレス誘発性不安障害の発症にかかわっている可能性が示された。海馬BMP4は既存の治療薬とは全く異なるメカニズムであるため、BMP4シグナルが新規の抗不安薬の治療ターゲットになることが期待される。
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