研究課題/領域番号 |
20K16665
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
榊原 英輔 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (00717035)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 近赤外線スペクトロスコピー / 安静時機能的結合 / 統合失調症 / 大うつ病性障害 / 偏相関分析 / うつ病 / 双極性障害 |
研究開始時の研究の概要 |
近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)は、うつ状態の鑑別診断補助のための診断バイオマーカーとして利用され始めているが、診断精度、測定の一貫性の点から限界がある。本研究では、NIRSによる安静時機能的結合(RSFC)の測定法を用い、うつ状態を呈する精神疾患(うつ病、双極性障害、統合失調症)における脳機能の診断特異的特徴を探索し、臨床応用されているNIRSによる語流暢性課題施行時の前頭・側頭部の脳活動に基づく鑑別診断補助法と組み合わせ、診断精度の向上を目指す。
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研究実績の概要 |
近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)装置(ETG-4000)を2台用い、頭部全周性に89Chで大脳皮質の血液酸素化信号を測定できるNIRS装置を組み、8分間の安静時脳活動を測定し、17の脳領域間の安静時機能的結合(RSFC)を比較した。健常者90名と、24名の統合失調症患者の17の脳領域間のRSFCを比較したところ、両側眼窩部前頭前野間のRSFCと、右の頭頂葉と側頭葉をつなぐRSFCが患者群で有意に高いことが示された。統合失調症群の平均年齢は24.1±6.1歳、健常群の平均年齢は37.0±7.4歳であり、有位に健常群の方が年齢が高かったため、共分散分析(ANCOVA)の手法を用いて、年齢の影響を除去した群間比較を行ったところ、同部位のRSFCの群間差は残存した。 患者群において、両側眼窩部前頭前野間のRSFCは、PANSSの陰性症状尺度と正に相関し、右の頭頂葉と側頭葉をつなぐRSFCは抗精神病薬内服量のクロルプロマジン換算量と正の相関が見られた。このため、両側眼窩部前頭前野間のRSFCの亢進は、統合失調症群における感情制御や意思決定メカニズムの異常を反映している可能性がある。 加えて、ETG-4000の装置1台で計測が可能な前頭側頭部の52Chの血液酸素化信号を用い、前頭葉、頭頂葉、側頭葉間のRSFCを推定したところ、89Chの信号を用いて頭部全周性に血液酸素化信号を測定したうえでRSFCを推定した場合と比べ、頭頂葉を含まない脳領域間のRSFCについては、一致度が高いことが分かった。 2023年度は、上記の成果をまとめて論文を執筆した。Schizophrenia Research誌に投稿し、現在査読中である。査読者の指摘を受けて、薬剤の種類と右の頭頂葉と側頭葉をつなぐRSFCの関係を検討したが、一貫した傾向はみられなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナの影響で患者群のデータ収集が遅れ、全体的に2年程度計画が後倒しになったが、ようやくデータをまとめて論文の投稿に至った。現在は査読中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は双極性障害の患者における安静時機能的結合の特徴を検討していく。さらに、ETG-4000の装置1台で計測が可能な前頭側頭部の52Chの血液酸素化信号を用い、前頭葉、頭頂葉、側頭葉間のRSFCを推定したところ、89Chの信号を用いて頭部全周性に血液酸素化信号を測定したうえでRSFCを推定した場合と比べ、頭頂葉を含まない脳領域間のRSFCについては、一致度が高いことが分かったため、52Chの通常のNIRS装置を用いて、健常者、うつ病群、統合失調症群、双極性障害群で安静時機能的結合の特徴の違いを検討していきたい。
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