研究課題/領域番号 |
20K16674
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
小森 崇史 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (70736917)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | マイクログリア / 脳由来神経栄養因子(BDNF) / 内側前頭前野(mPFC) / 社会性 / BDNF / 幼若期隔離マウス |
研究開始時の研究の概要 |
近年、精神疾患の脳内分子基盤には神経細胞だけでなく、グリア細胞と呼ばれる神経細胞以外の細胞が関与している可能性が示唆されている。 そのうちマイクログリア(MG)は、脳内の炎症に関与していることが知られている。また、MGは脳由来神経栄養因子(BDNF)と呼ばれる神経回路の調整などに関わる物質を分泌しているが、MG由来BDNFの働きは未だ不明な点が多い。 本研究では「MG由来BDNFが、精神疾患で重要な治療標的となる社会性の低下に関与しているのではないか」という仮説のもと、マウスを用いて行動、分子学的な検証を行い、社会性障害の治療にMG由来BDNFという新たな治療ターゲットを提唱することを目指す。
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研究実績の概要 |
マイクログリア(MG)は、脳由来神経栄養因子(BDNF)などの神経栄養因子を放出し、神経発達に影響を与える。例えば、マイクログリア由来のBDNF(MG-BDNF)は学習に必須であることが知られている。しかし、MG-BDNFが発達期における前頭前野の成熟やその機能の一つである社会性に与える影響は不明であり、本研究ではその解明を試る。 出生後21日目(P21)からP35までマウスを単独飼育して社会的経験を剥脱すると(j-SIマウス)、内側前頭前野(mPFC)の異常や社会性の障害を呈する。このj-SIマウスを解析したところMG-BDNFの過剰発現が確認された。つまり、幼少期の社会経験剥脱はMG-BDNFの過剰発現を介してmPFCや社会性の異常を呈することが示唆された。よって、MG-BDNFを過剰発現させたマウス(Iba1-BDNFマウス)を作成し、追証を行った。この系は、doxycycline(DOX)の投与によってMG-BDNFが正常化し、非投与下でMG-BDNFが過剰発現している。 まず、MG-BDNFが常時高値であったIba1-BDNFマウスを解析したところ、j-SIマウスと同様に社会性が障害された。さらに、mPFCにおける興奮性/抑制性バランスが抑制性優位となっており、この結果はj-SIと一致した。一方で、P21からDOXを投与しMG-BDNFを正常化すると、これらの異常は見られなかった。また、青年期後期から(P45~) DOXを開始し、MG-BDNFを低下させても、これらの異常は回復しなかった。以上のことから、幼少期体験による社会性やmPFCの異常にMG-BDNFの関与が示唆された。また、Iba1-BDNFのmPFCを用いてRNAseq解析を行ったところ、補体の発現変化が認められ、MG-BDNF過剰発現が引き起こす変化を説明するメカニズムの一つである可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定された実験は概ね予定通りに終了しており、進捗は順調である。
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今後の研究の推進方策 |
論文を作成し、投稿する。
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