研究課題/領域番号 |
20K16678
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
金城 智也 順天堂大学, 医学部, 非常勤助教 (80750364)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | バルプロ酸 / PBMC / ADHD / アセチル化 / リンカーヒストンH1 / ヘテロクロマチン / acetylation / コアヒストンタンパク質 / HDACi / RNAseq / HDAC1 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、VPAのHDAC阻害作用に注目し、中枢神経と末梢血のエピジェネティクス学的解析を行っていく。具体的には妊娠ラットにVPAを投与し、生まれてきた仔に対し、脳神経と白血球のエピジェネティクス的変化を比較する。さらに、これまで行ってきた行動解析と神経病理解析の結果と照らし合わせることによって、それが臨床的に何を意味しているのかを明確にする。このように、動物実験において末梢血と中枢神経のエピジェネテックス学的変化を追究するための計画を立案した。
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研究実績の概要 |
抗てんかん薬のバルプロ酸ナトリウム(VPA)を妊娠中服薬していた妊婦から生まれた児は発達遅延とともに注意欠陥多動性障害(ADHD)リスクの上昇が指摘されている。本研究ではその診断補助の基礎研究として、動物実験において末梢血と中枢神経のエピジェネティクな関係性の解明を目的とした。妊娠12.5日目のラットにVPA(200mg/kg)を連日腹腔内投与し、生後4週齢及び20週齢の仔ラットを研究対象とした。行動実験は4週齢のみ行い、VPA群において多動が観察された。生後4週齢の全血のRNAサンプルを用いてRNA-seq解析を行った結果、VPA群において、遺伝子発現の増加(約24 %)と低下(約76 %)が観察された。生後4週齢と20週齢の灌流固定した脳組織を用いて免疫蛍光組織染色を行った結果、4週齢のVPA群では、ヒストンH3とH4それぞれのヒストンテールのリジン残基が、有意に低アセチル化状態になっていた。一方、20週齢のVPA群では、アセチル化の低下傾向は観察されたものの、有意差は認められなくなっていた。生後4週齢の末梢血単核球(PBMC)のヒストン抽出物を用いてウエスタンブロッティング解析を行った結果、ヒストンH3とH4のアセチル化低下と、ヒストンH1の発現増加が、有意に観察された。さらに、このヒストン抽出物をネガティブ染色し、電子顕微鏡観察を行った結果、VPA群において、クロマチンの凝集が観察された。生後4週齢と20週齢の脳組織も電子顕微鏡観察を行ったところ、4週齢において、細胞核内のヘテロクロマチンの増加が観察された。20週齢においては、クロマチンの異常は回復していた。 令和5年度の主な実績としては、脳組織において、多数のリジン残基アセチル化変化の検出、PBMCにおいて、ヒストンH3とH4のアセチル化とリンカーヒストンH1の定量的検出に成功し、それぞれのクロマチンが異常な状態であることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今回、VPA群において、遺伝子発現低下が多かった事と、リンカーヒストンH1の増加を発見したことによって、ヒストン蛋白質の凝集およびヘテロクロマチンの増加が示唆され、電子顕微鏡観察を実施するに至った。 結果、予想以上にヘテロクロマチン化が進んでおり、多動性行動異常の重要な分子メカニズムを見出した可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
末梢血のRNA-seqデータを詳細に解析する。具体的には、エピジェネティックあるいは多動性行動異常に関連した変動遺伝子の抽出、ヒートマップおよびボルケーノブロットによる変動遺伝子の可視化、パスウェイ解析等である。 これらのデータマイニングが完了した後、そのデータを論文に追加し、投稿する予定。
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