研究課題/領域番号 |
20K16682
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52030:精神神経科学関連
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
河西 ひとみ 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 行動医学研究部, 科研費研究員 (90807067)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2020年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 自己臭恐怖 / 過敏性腸症候群 / 心身相関 / 嗅覚 / 生物学的基盤 / 神経基盤 / 自殺念慮 / 病態解明 / 脳腸相関 / 神経基盤の解明 / 希死念慮 |
研究開始時の研究の概要 |
わが国で有病率が高い自己臭恐怖(Olfactory reference syndrome)の病態メカニズムと神経基盤の解明を目指す。自己臭恐怖は自分から嫌な臭いがすることへの恐怖を持つ疾患であるが世界的に研究が乏しい。近年、日本のみでなく国外でも罹患者が多いこと、国内では消化器症状に関連する臭いを主訴とする自己臭恐怖患者には実際に過敏性腸症候群が50%以上の割合で併存していたことが報告されてきた。脳と腸の相互作用(脳腸相関)と、嗅覚を含めた観点から症状メカニズムや神経基盤を検討することで、自己臭恐怖や類縁疾患の病態解明において新しい知見を提供できる可能性がある。
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研究実績の概要 |
本研究は自己臭恐怖 (Olfactory reference syndrome:ORS、嗅覚関連づけ症候群)について、消化器症状との合併という心身相関の観点から病態解明を目指して実施した。ORSは従来、特に日本など東アジアに有病率が高いと言われてきたが、近年、国際的に罹患者が多いこと、国内では消化器症状に関連する臭いを主訴とする自己臭恐怖患者には実際に過敏性腸症候群(IBS)が50%以上の割合で併存していたことが報告されてきた(小林, 2015. 心身医学. https://doi.org/10.15064/jjpm.55.12_1380)。
ORSは、DSM-5では強迫症および関連症に分類されているが、歴史的には不安症や妄想性障害、Schizotypyとの関連も指摘され、病識レベルに幅があり、妄想的とはいえない場合もある。殊に、放屁や便通異常といった身体症状が存在する場合は、了解可能な臭いが出ていることへの不安が何らかのメカニズムによって増幅されている可能性もある。しかしながら、現段階では世界的に研究が乏しい。
プレプリントとして自己臭恐怖と消化器症状の両方を有する研究参加者を対象とした論文を投稿し(Kawanishi et al, JMIR Preprints:未受理, https://doi.org/10.2196/preprints.23895)自己臭恐怖症状の重症度と、IBSの重症度の平均得点は、いずれも中等症を示し、両者には相関があった (r = 0.37, P < 0.001)ことから、次に当初より計画していた嗅覚検査を実施する予定であった。しかしながら、2022年度も新型コロナウイルスの感染対策が依然必要であり、マスクを外して実施する嗅覚検査を実施することが困難であったことから、新たな研究参加者の募集を行わなかった。新型コロナウイルス感染対策の状況が変わり次第、研究が継続できるよう準備を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度も新型コロナウイルスの感染拡大が続いたことにより、マスクを外して実施する嗅覚検査を予定通り遂行することは感染対策上困難であり、新たな研究参加者の募集を行わなかった。
また使用していたMRI(核磁気共鳴画像法)の機種変更により、新たに別機種で撮像を継続した場合のハーモナイゼーションの対応等が必要になったこと等の研究環境に変化が生じたことにより、計画の立て直しが必要となった。 2022年度は研究の再開が可能になるまでの期間、研究代表者が所属する機関に併設する病院にて心療内科医師の診察によるの当該研究対象者(ORSとIBSが併存する)の既存患者の診療継続と、臨床心理士・公認心理師である研究代表者の心理面接を併行して治療の継続を行った(寛解例複数あり)。
また、先行研究や上記の投稿論文の結果からORSとIBSが併存する人々において自殺念慮が高いことが判明したため、2022年度は対象疾患は異なるが心的外傷後ストレス障害(PTSD)の研究に従事し、PTSD患者における自殺念慮について検討を行った。当初の研究対象であったORSとIBSが併存する患者においても、PTSD患者においても、いずれもBDI-Ⅱの項目9で自殺念慮を測定している。いずれの疾患群ともに自殺行動のハイリスク群の人々の割合が多く、臨床において特に重要な課題であるという観点から、疾患分類を超えてPTSD患者の自殺行動(自殺念慮も含む)の生物学的基盤について検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染対策により実施が困難であった嗅覚検査を加えた研究の再開を見越して準備を行う。
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