研究課題/領域番号 |
20K16738
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 聖路加国際大学 |
研究代表者 |
堀内 沙矢 聖路加国際大学, 聖路加国際病院, 医員 (90867029)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2021年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 手関節MRI / MRI / TFCC / 三角線維軟骨複合体 / 放射線科学関連 |
研究開始時の研究の概要 |
TFCCの靭帯構造、軟骨、骨形態の包括的なMRI診断の実現と臨床普及を目指し次の3つの研究を行う。 [1] TFCC靭帯構造の尺骨の損傷・変性のMRI診断能検討を行う。またボランティア群においてTFCC構造の動態解析を行う。 [2] T2マッピングを用て手関節軟骨のT2値を定量し、健常軟骨T2値の同定と変性・損傷による変化が軟骨の組成へおよぼす影響を検討する。 [3] ZTEによる尺骨形態解析ZTEにより尺骨形態についてCTと比較した場合の描出能・診断精度を検討し、骨病変診断や術前検査を目的としたCTの削減と、それによる放射線被曝量の低減、時間・費用・苦痛などのデメリットの低減効果を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究は、高分解能MRI、T2マッピング、ZTEを用いた手関節構造の解析とその臨床応用を目指しています。現在までの進捗は概ね順調に進んでいます。 まず、高分解能MRIの撮像条件を改良し、TFCC(手関節三角靭帯複合体)の詳細な観察を行いました。これにより、TFCCの微細構造や損傷の描出が可能となり、手関節の運動機能に関する新たな知見が得られることが期待されます。 次に、T2マッピング技術を用いて手関節軟骨の定量評価を行い、健常ボランティアの軟骨のT2値を測定しました。このデータは今後の患者データとの比較に重要です。また、軟骨損傷や変性の程度を評価し、疾患の早期発見や診断に役立つことを目指しています。 さらに、ZTE技術を用いた尺骨形態の解析が進行中で、骨構造の描出が可能な条件設定を完了し、一部の例で観察を行いました。これにより、TFCC付着部の評価が進んでいます。この技術は骨病変の診断や術前検査において利点を提供するものと期待されます。 現在、健常ボランティアの撮像を一部完了しています。ボランティア撮像は若干遅れていますが、最適な条件を設定するための重要なプロセスであり、予定数に達するためのボランティア撮像を計画しており、これによりデータの信頼性と精度を高めることを目指しています。 これらの技術を組み合わせることで、手関節の総合的な評価が可能になりつつあります。具体的には、高分解能MRIによる靭帯構造の観察、T2マッピングによる軟骨の定量評価、ZTEによる骨形態の解析を統合し、手関節の機能的構造を理解するための診断法の確立を目指しています。研究は概ね計画通りに進展しており、次年度以降の成果が期待されます。引き続き、研究成果を国内外の学会や論文で発表し、手関節MRI技術の発展に寄与することを目的としています。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、高分解能MRI、T2マッピング、ZTEを用いた手関節構造の解析とその臨床応用を目指していますが、現在、進捗がやや遅れています。主な理由は、COVID-19の感染対応や関連する制約が影響していることです。 COVID-19の感染拡大は以前より落ち着いており、通常状態に戻りつつありますが、感染対策は依然として必要です。このため、ボランティア撮像の実施に際して、感染防止策の徹底が求められ、通常よりも準備と実施に時間がかかる状況です。また、発熱者や体調不良者の出勤停止措置が継続しており、スタッフの出勤状況に変動が生じ、リソースのフル活用が難しくなっています。 具体的には、ボランティア撮像のスケジュールが変更され、予定していた撮像件数に達していない状況です。感染防止対策として、撮像前後の消毒作業やボランティアの健康状態の確認が必要となり、通常よりも多くの時間と労力が求められています。さらに、一部のボランティアが体調不良や感染リスクを考慮して参加を見合わせるケースも発生しました。 これらの影響により、研究の進捗がやや遅れているものの、全体の計画は進行しています。今後、感染状況の改善に伴い、ボランティア撮像のスケジュールを再調整し、リソースの効率的な配分を図ることで、遅れを取り戻す予定です。撮像条件の最適化や解析手法の改良も並行して進めることで、データの信頼性と精度を高めることを目指しています。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策について述べます。本研究の最終目標である、手関節構造の高精細なMRI診断技術の臨床応用に向けて、以下の具体的な計画を進めてまいります。 まず、現在までに得られた健常ボランティアのデータを基に、さらに多くのボランティアおよび実際の患者を対象とした撮像を行います。これにより、手関節の各種病変に対する診断能の評価と、健常者との比較による異常所見の特定を行います。特に、TFCC損傷や軟骨の変性、骨病変に対するZTE技術の有効性を検証し、その臨床的意義を明確にします。 次に、撮像条件の最適化をさらに進め、より迅速かつ精確な画像取得を目指します。具体的には、パラレルイメージングや新しいシーケンスの導入を検討し、撮像時間の短縮と画質の向上を図ります。また、T2マッピングとZTEを組み合わせたハイブリッド撮像法の開発を進め、軟骨と骨の包括的な評価を可能にする技術の確立を目指します。 さらに、これらの技術を臨床現場で実際に使用するためのプロトコルの確立を行います。具体的には、撮像手順の標準化、撮像データの解析方法の確立、診断基準の作成などを行い、臨床医が容易に利用できるようにします。また、撮像結果を基にした治療方針の決定プロセスへの影響を評価し、MRI技術が治療計画にどのように貢献できるかを検証します。 最後に、研究成果を国内外の学会や論文で発表し、広く情報を共有することで、MRI技術の普及と臨床応用の促進を図ります。また、共同研究者との連携を強化し、最新技術の導入や新しい研究テーマの開拓を行うことで、研究の進展を図ります。 以上の計画に基づき、引き続き研究を推進し、手関節MRI診断技術の向上と臨床応用の実現を目指してまいります。
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