研究課題/領域番号 |
20K16788
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
辻田 有志 神戸大学, 医学研究科, 特命助教 (00852435)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2020年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | IRE / 深部膿瘍 |
研究開始時の研究の概要 |
Irreversible electroporation(以下IRE)とは、経皮的に電極針を挿入し通電する技術で、肝細胞癌や膵癌等悪性腫瘍に対する新たな治療法として注目されつつある。IREは加熱しないため、周囲の組織や臓器への影響を少なくできる長所がある。これまでIREの適応は悪性腫瘍のみで、膿瘍に対する治療法としての報告は見られない。本研究ではマウスを用いた動物実験により、深部の膿瘍に対するIREの有用性を検討する。
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研究実績の概要 |
本研究はIrreversible electroporation(以下IRE)と呼ばれる、経皮的に電極針を挿入し通電する技術の、深部膿瘍に対する有用性を検討する研究である。IREはこれまで局所進行膵癌や肝細胞癌で治療応用され、今後はその他の悪性腫瘍について応用が期待されている。肺の難治性膿瘍に対しラジオ波焼却療法が報告されており、本研究では深部膿瘍(肝膿瘍)を有するマウスを用いて前述の有用性について検討する予定である。 1つ目の研究課題として、培地上の細菌に対する殺菌効果の最適なIREパラメーター〈電圧(voltage)・通電時間(us)・通電間隔(s)・通電回数〉を設定した。細菌は臨床検体より分離したメチシリン感受性黄色ブドウ球菌を使用した。液体培地は Luria Broth培地を使用し、この培地に粉末寒天を追加して半流動培地(最終 寒天濃度:0.5%)を作成、シャーレに半流動培地を注ぎ、黄色ブドウ球菌を混入し常温管理した。この手法により今後安定して細菌培地の提供を行い、以後の研究 で使用予定の皮下膿瘍モデル、肝膿瘍モデルマウスの作成が可能となる。本研究とは直接の関連には乏しいが、本年度に肝細胞癌の治療効果判定や近年主流となりつつある分子標的薬・免疫チェックポイント阻害薬における放射線画像検査に関し、国内英文雑誌での論文発表を行った。また、びまん性肝疾患におけるCT、MRIでの定量評価に関する原稿が国内雑誌にて出版済みである。現在は肝疾患、胆道疾患に関する書籍を執筆中である。本年度は消耗品や学会参加費、関連書籍、論文の英文校正費、研究備品等に補助金を使用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初、培地上の細菌に対する殺菌効果について、IREパラメーターの最適値を設定し、背部皮下膿瘍モデルマウスを用いた動物実験の開始を本年度中に予定していた。昨今の社会情勢のため、研究室の立入禁止や消耗品、備品の納入の遅れ、学会発表の中止等が重なり、現時点では細菌培養の手法、およびIREパラメーターの最適値の設定の確立に留まっている。本年度中にマウスを用いた動物実験の開始を行う予定であったが、研究担当者の研究機関の移動の予定も重なり、当初の計画を変更、補助事業期間の延長を申請し、次年度より行う予定とする。
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今後の研究の推進方策 |
黄色ブドウ球菌を混入した培地の一部をBALB/cマウスの皮下に注射し、マウス皮下膿瘍モデルを作成する(免疫反応により膿瘍形成が困難な場合は移植2日前に放射線照射を行う)。培地を用いた実験により得られたIREパラメーターで 皮下膿瘍に対し通電し、殺菌効果について検討する。また、膿瘍腔周囲の正常皮膚、皮下組織の壊死の有無も併せて評価する。さらに黄色ブドウ球菌を混入した培地の一部を肝内に移植し、肝膿瘍モデルも作成する。こちらは開腹下で通電し、皮下膿瘍モデルと同様に殺菌効果を確認する。また、膿瘍腔周囲の肝実質および門脈等の脈管の開存についてはH&E染色や免疫染色を行い、周囲既存構造の状態を確認し、血管構造の壊死の有無を評価する。良好な結果が得られた場合、国際学会での発表や論文作成についても検討している。
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