研究課題/領域番号 |
20K16812
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所) |
研究代表者 |
氷室 秀知 地方独立行政法人神奈川県立病院機構神奈川県立がんセンター(臨床研究所), がんワクチン・免疫センター, 医師 (90772567)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2021年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2020年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 放射線治療 / 腸内細菌叢 / アブスコパル効果 / 放射線療法 / 転移抑制 / 腫瘍内細菌 |
研究開始時の研究の概要 |
腸内細菌叢が免疫チェックポイント阻害剤の臨床効果に影響すると報告されている。また、放射線療法の併用がabscopal効果(放射線非照射部の腫瘍に治療効果を認める現象)誘導などを介して、免疫チェックポイント阻害剤の臨床効果を高めると報告されている。このように、腸内細菌叢と放射線治療は共に免疫チェックポイント阻害剤の臨床効果に影響するが、腸内細菌叢と放射線治療との関連を詳細に検討は充分にされていない。本研究では、それら腸内細菌叢と放射線治療及び腫瘍免疫との関連について検討し、腸内細菌叢の調整による放射線治療の増感やアブスコパル効果誘導、転移抑制など臨床に寄与しうる新規知見を得ることを目的とする。
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研究実績の概要 |
腸内細菌叢を改変したマウスを用いて、腸内細菌叢が放射線治療の効果に与える影響について、基礎的な検討を進めた。腫瘍細胞株(Lewis lung carcinoma cell line)を、下腿部皮下に移植した腫瘍移植マウスモデルを用いて、腸内細菌改変群と非改変群とにおける、放射線治療の抗腫瘍効果について腫瘍体積の推移を計測することで、比較検討を実施した。放射線照射は、鉛遮蔽を用いて、腫瘍局所に8Gyx3回を実施した。腸内細菌改変群において、非改変群と比較して、腫瘍体積の抑制傾向を認めた。腸内細菌改変が放射線の抗腫瘍効果の増感をもたらす可能性が示唆された。また、X線だけでなく、重粒子線においても同様の検証を実施した。重粒子線照射においても、X線と同様に、腸内細菌改変により抗腫瘍効果の増強を示す傾向が認められた。それら、動物モデルを用いた基礎的な検討と並行して、放射線治療施行患者の臨床検体のサンプリングを進めた。X線および重粒子線治療を施行した患者より、糞便を採取し、糞便内の細菌DNAを精製した。メタゲノムDNAからショットガンライブラリーを作製後、ショートリードシークエンサーを用いてシークエンス情報を取得した。腸内細菌叢について、データベース配列へマッピングを実施することで菌種の特定や、また機能などについて検証をすすめている。放射線照射前・照射終了時・照射終了1か月後を目安に採血を実施した。臨床情報と併せた統合的な解析を実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた動物実験のモデルがコントロール群においても、個体差が大きく、単純な比較検討が難しく、プロトコールの検証に時間を要してしまっているために、進捗が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
臨床検体を用いた、腸内細菌叢のシークエンス情報について、臨床情報やその他、血液中の免疫細胞や液性因子のデータなどを含めた、統合的な検討をすすめる予定である。放射線治療の効果において、関与する腸内細菌の種そのものの同定や、放射線治療増感に寄与する腸内細菌がもつ機能についてさらなる検討を進める。放射線治療の抗腫瘍効果と、腸内細菌叢との関連の一端を解明することで、実臨床へと還元できる有意義な情報を獲得したいと考えている。また、それらのデータのメカニズムを補完できえるデータを、前臨床モデルを用いた検証により、取得を進めたい。
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