研究課題
若手研究
Clonal Hematopoiesis (CH) とは血液学的異常が無い人に血液細胞の体細胞クローンの増殖を認めることと定義され、一般的に加齢とともに頻度が増加することが知られている。これまでの報告より、CH が局所の炎症を惹起し腫瘍環境の変化に関わっている可能性が考えられる。一方、慢性炎症や血管新生を始めとする腫瘍微小環境の放射線治療抵抗性へ果たす役割は大きい。しかし、腫瘍微小環境が感受性に直接影響する放射線治療と、CH との関連については未だ不明である。それを解明し、放射線治療抵抗性 に対する新たな治療標的を模索するのが本研究の目的である。
今回の研究ではclonal hematopoiesis(CH) と放射線治療抵抗性のメカニズムの解明を目標とし、頭頸部癌患者67例のシークエンス解析の結果、無再発生存率・局所再発率ともにCHの存在がリスク因子となることが多変量解析で示された。また、末梢血単核球の遺伝子発現比較のために、CHの有無でRNA-seqを行ったところ、CH有り群において炎症や免疫の主なメディエーターである遺伝子群の発現が高く、またGSEA解析においてはIFN-γの産生が亢進しており、CHの存在が慢性炎症の誘導に関わっている可能性が考えられた。これらの結果を元に、CH のモデルマウスを作成し、追加解析を行っている。
これまで放射線治療抵抗性へのアプローチとしては低酸素イメージングや線量増加などの報告が多いが、CH に伴う炎症の惹起や腫瘍微小環境の変化に着目した研究は皆無であった。本研究はその点において独自性があり、化学放射線治療を受ける頭頸部癌患者においてCH の有無が局所再発率に関与していることが判明した。今後、CH による腫瘍微小環境の変化が放射線治療抵抗性へ関与していることをコンディショナルノックアウトマウスを用いて解析予定だが、それらが解明できれば抗炎症作用をもつ薬剤の投与や血管新生阻害剤、マクロファージの遊走を阻害する薬剤など、CH を有する患者における新たな治療戦略の設計が可能となる。
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち国際共著 1件、 査読あり 12件、 オープンアクセス 11件) 学会発表 (6件)
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