研究課題/領域番号 |
20K16827
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研究種目 |
若手研究
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配分区分 | 基金 |
審査区分 |
小区分52040:放射線科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
樋田 知之 九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (40848644)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2021年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2020年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 胸部X線動態撮影 / 横隔膜運動 / 努力呼気 / 慢性閉塞性肺疾患 / 呼吸機能 / 肺野灌流 / 胸部X線動画像 / 画像診断学(含放射線診断学) / エックス線・CT / 臨床呼吸器学 |
研究開始時の研究の概要 |
胸部X線動画像は、静止画の情報に加えて対象の”動き”を観察可能とし、胸郭や呼吸筋の運動の描出、さらに呼吸や心拍出に伴う肺野の濃度変化から換気や血流の情報が一度の検査で、少ない被曝で得られる技術である。本研究では、胸部X線動画像の運動、換気および血流解析を用い、健常者および疾患群においてこれらのパラメータを詳細に評価、検討したうえで新たな呼吸関連機能評価指標として確立し、その基準値および個々の疾患における特徴、および診断・治療への有用性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
胸部X線動態撮影は、静止画の情報に加えて対象の”動き”を観察可能とし、胸郭や呼吸筋の運動の描出、さらに呼吸や心拍出に伴う肺野の濃度変化から換気や血流の情報が一度の検査で、少ない被曝で得られる技術である。本研究は、胸部X線動画像を用いた呼吸機能関連指標の確立を目的とし、申請者はこれまでに胸部X線動画像を用いて横隔膜頂部の呼吸に伴う偏位を追跡・定量し、その定量値を用いて努力呼吸における横隔膜偏位量や横隔膜運動速度を算出することで、健常ボランティア群および慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease; COPD)群における横隔膜動態を定量化し、これらと呼吸機能検査の各種結果や臨床データとの相関や、またCOPDの進行の程度によって偏位量に差異が認められることを明らかにした。これらのデータに基づき、胸部X線動態撮影を用いた横隔膜動態の新しい解析手法として、努力呼気相での偏位幅および時間を正規化し偏位曲線として表すことで、健常ボランティア群およびCOPD群における横隔膜頂部の経時的偏位の差異を視覚的、定量的に表す方法を考案した。現状では呼吸器疾患における横隔膜動態の変化やその意義、またその評価方法は確立した指標はなく、その候補の一つとして、この解析方法の有用性についての検討を重ねており、COPDの進行の程度に応じた偏位の差異や、呼吸機能検査の各種結果、あるいは健常ボランティア群の中でも呼吸機能や喫煙歴といった臨床データとの相関についての解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
胸部X線動画像を用いた呼吸機能関連指標の確立を目的として、胸部X線動画像を用いた呼吸機能関連指標の候補としての横隔膜動態の解析をさらに進めているものの、現在の解析においては呼吸機能検査結果との相関は軽度~中等度に留まり、その他の胸部構造の動態や肺野濃度変化、あるいはこれらを総合的に評価する必要性を考えるが、その解析手法の確立と十分な症例収集については現状十分とは言えず、全体の進捗としては遅れているものと判断した。呼吸機能関連指標としての横隔膜動態解析の新規手法として、努力呼気相での偏位幅および時間を正規化し偏位曲線として表すことで、対象間あるいは群間での比較を可能にし、横隔膜頂部の経時的偏位の差異を視覚的、定量的に表すことが可能となった。胸部X線動態撮影を用いた努力呼気相の横隔膜偏位曲線の解析は呼吸器疾患における呼気時横隔膜運動の評価法として利用できる可能性があり、その結果について報告を予定しているが、その利用や有用性の評価についてはさらに多くの症例を用いた検討、検証が必要であり、報告の準備とともに症例収集と解析方法の改良を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
・胸部X線動画像を用いた横隔膜動態解析およびその呼吸機能関連指標への利用として、今年度は努力呼気相での偏位幅および時間を正規化することで対象間あるいは群間での比較を可能にし、またこれをプロットすることで努力呼気相の横隔膜偏位を曲線で表現し、横隔膜頂部の経時的偏位の差異を視覚的、定量的に表すことを可能にした。その成果をまとめるとともに、続く研究として最大偏位量や速度などの他のパラメータとともに、横隔膜の立体構造を反映した解析や、胸部X線動画像より得られるその他の構造の動態や肺野濃度変化・肺野灌流信号などの他のパラメータと組み合わせることによって、胸部X線動画像を用いた呼吸機能指標としての可能性、有用性の検討を進め、本検討結果と合わせて解析を進めていく。 ・胸部X線動画像は膨大な量の画像を処理する必要があり手作業では限られた時間で解析を完了することが難しく自動処理技術の発展が不可欠である。現在のソフトウェアで可能な解析を行うのと並行して、新たなワークステーションを用いたより高度な解析環境を構築し、解析の効率化や新規解析手法の考案・実践を引き続き図っていく。 ・COVID-19の世界的流行は画像検査や呼吸機能検査の制限につながっており、本研究における症例の収集に及ぼしている影響は少なくない。蓄積済の症例を中心とした解析、報告を行うとともに、さらなる検討、検証に必要な症例の収集を続けていく。
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